投稿者 スレッド: 空海  (参照数 335 回)

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空海
« 投稿日:: 12月 23, 2013, 11:48:07 am »
書名:空海
著者:三田 誠広
発行所:作品社
発行年月日:2005/12/15
ページ:325頁
定価:1800円+税

「空海」というと伝説が多い人、全国至る所に伝説が残る。修験道者の事跡も取り入れられている。弘法大師の実像は?

この物語も数多くの伝説も取り入れてスーパーヒーローとしての空海を描いている。 蝦夷の血を引く佐伯氏の末裔として讃岐に生まれ、山野を駆け、漢籍を1人で読み、書も独自で覚えてしまう。何の苦労もなく学問を吸収してしまう。儒学、「仏教経典」五千四十余巻を貪欲に吸収していく。そして密教に興味を持って唐に渡り、青龍寺の恵果和尚より唯授一人の伝法潅頂を受けるまでの数奇な全生涯を入滅するとき弟子たちに囲まれながら回想する形で描いている。

坂上田村麻呂に説教したり、アテルイに降伏を進めたり、唐で橘逸勢に書写を頼んだり、和気清麻呂と都づくり、治水工事の話をしたりと、登場人物も奈良時代初期の頃の有名どころが次々と登場する。
最澄は真面目で努力の人、そして出世に夢をかけた人、教団を大きくすることに励んだ。空海は天才肌の人、国の治安、平和の為に仏教を利用しようとした人と言えるかもしれない。でも時代はそれを許さなかった。留学僧として突然全く無名の空海が選ばれて最澄らとともに唐に渡るが、何故?この物語ではその謎の一つの回答を提案している。なかなか面白い長編小説です。

本書より
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最澄は日本で天台智頭の論書を読むだけで、その難解な思想体系の全体を理解した。書物を読むだけですべてを理解出来るという自負があった。これが延暦寺の伝統と以後引き継がれていく。
空海は違う。言葉を超えた真理を山岳修行で体得しなければ、密教の奥義には到達できない。言葉は抜け殻であり、瓦礫である。だが

「言葉によって言葉にならぬ真理を示す。それが仏教経典であり、言葉とはそれほど重いものだ。教えとは言葉だ。言葉だけが教えだといってもいい。言葉だけが実在であり、言葉にならぬものは無すぎぬ。わしは言葉を信じる。言葉だけを信じる。」そう言った般若三蔵の声がいまも耳に残っている。

第1回三田誠広さん「デジタル社会の文学と著作権」
http://www.slownet.ne.jp/sns/area/life/reading/interview/200601251840-1000000.html
第2回三田誠広さん「『僕って何』から『空海』まで」
http://www.slownet.ne.jp/sns/area/life/reading/interview/200601251842-1000000.html
第3回三田誠広さん「2007年に変わり始める」
http://www.slownet.ne.jp/sns/area/life/reading/interview/200601251844-1000002.html