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官僚 川路聖謨の生涯
« 投稿日:: 12月 07, 2012, 12:23:06 pm »
書名:官僚 川路聖謨の生涯
著者:佐藤 雅美
発行所:文藝春秋
発行年月日:2000/12/10
ページ:488頁
定価:590円+税

幕末期の外国奉行を勤め、プチャーチンと日露和親条約を結ぶ交渉を行った川路聖謨の生涯を描いた長編歴史小説です。日田の代官手付けの子供として生まれ川路家に養子に入った後、能力を発揮し、勘定吟味役、佐渡奉行、奈良奉行、大阪町奉行を経て勘定奉行・外国奉行に昇進していく。
 明治以降になって幕府の役人、官僚については評価されることがなかった。勝海舟は氷川清話でも藤田東湖、川路聖謨らをあまり評価していない。

外交交渉では、イワン・ゴンチャロフは次のように書いています。
「川路を私達はみな気に入っていた。(中略)川路は非常に聡明であった。彼は私たちを反駁する巧妙な弁論をもって知性を閃かせたものの、それでもこの人を尊敬しないわけにはゆかなかった。彼の一言一句、一瞥、それに物腰までが、すべて良識と、機知と、炯眼(けいがん)と、練達を顕していた。明知はどこへ行っても同じである。」
プチャーチンは帰国後に「日本の川路という官僚は、ヨーロッパでも珍しいほどのウィットと知性を備えた人物であった」と書いています。

武士階級の底辺から這い上がり、頼むは己の才智のみ。昇りうる最高の地位まで立身を果たした幕末の官僚の生涯を描いている。幕府落日に向かう時代。その中で聖謨の頭脳明晰、人間性の高さ、実直さ、愚直さ、清廉潔白、則をわきまえた行動により、信頼を得て立身した。時代が酒は飲めたが、接待、外では絶対飲まなかった。そして江戸城開城決定直後にピストル自殺で川路の人生の幕は閉じられた。最期の役人、官僚の壮絶な生き様が生き生きと描かれている。

本書あとがきより
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「川路は稀有の立身出世を遂げた男でそれだけで驚嘆すべきことであるが、それもさることながら群の抜いて優秀な官僚だったことをもう一度認識させられたということになろう。川路は江戸期を通じてこの人を超える官僚はいなかったろうと断言しても、けっして大げさではない、官僚の鑑といっていい官僚である」