書名:日本人は災害からどう復興したか
江戸時代の災害記録に見る「村の力」
著者:渡辺 尚志
発行所:農山漁村文化協会
発行年月日:2013/2/25
ページ:241頁
定価:2000円+税
主に18世紀初頭から19世紀の江戸時代の津波・洪水・飢饉・火山噴火・地震という多様な自然災害の災害記録を取り上げており地域的には東北から九州にいたる全国各地の事例を解説しています。災害の体験者が書き残した記録を記述の軸にすることによってリアリティあふれる描写になっています。
また後世の人々に残しておきたいメッセージがひしひしと伝わってきます。自然災害といいながら江戸時代でも人災の様相を呈していたということが、飢饉なんかでも現れています。元々亜熱帯地域のお米を新田の開発と共に東北地方まで広げていって、そして冷害に強い作物は作らなくなってしまった時に起こった飢饉。災害の中でも餓死するといった飢饉の悲惨さは他に比べるものがないと先人は言っている。人間が奢り高ぶり、慢心しているところに災害はやってくる。いつも分をしって謙虚に質素に生きないといけない。そんなことを忘れて奢っている人が災難にあう。と先人は言っている。しかしまた謙虚に奢らない正直な人にも訪れる矛盾については困惑している。でも奢ってはいけないと言っている。
災害の多い日本の先人は名も知らない人たちが、その災害について救援をしたり、記録したり、子孫に伝えようとして残してくれた貴重なものがある。「日本農書全集」に掲載されている災害関係の資料を使って詳しく解説されている。
災害に対して領主の役割責務、百姓の役割、村の共同、相互扶助などを通じて復興を繰り返してきた歴史がここにある。
江戸時代の自然災害で被災した村の復興の原動力を、当時の災害記録から読み解く。津波・洪水・飢饉・噴火・地震を災害記録で追体験しながら、困難な復興のなかで鍛えられていく村の百姓たちの力をわかりやすく解説。
本書は、近世の自然災害の検討を通じて、歴史学の立場から、災害・防災研究に寄与しようとするものです。本書では、津波・洪水・飢饉・火山噴火・地震という多様な自然災害を取り上げています。地域的には東北から九州にいたる全国各地の事例を取り上げ、時期的には18世紀初頭から19世紀にわたっています。
本書では、災害の体験者が書き残した記録を記述の軸に据えることで、当事者ならではのリアリティを現代に伝えようとしました。災害の客観的経過を追うだけでなく、当事者の主観・思い・行動を重視したのです。また、災害からの復興過程の追跡を通じて、近世の村と百姓のありようをも解明しています。災害という非常事態に際して明瞭に表れる近世村落の特質、ひいては近世社会の特質についても述べています。
本書目次から
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●第1章 津波―「高崎浦地震津波記録」を読む
元禄の大地震で津波が襲う
●第2章 洪水―「大水記」を読む
江戸で学んだ名主・奥貫友山
寛保二年の大洪水-関東平野から信濃にわたる大災害
久下戸村の被害と復興
藩に代わって救済活動を始める
●第3章 飢饉―三大飢饉の記録を読む
1.享保の飢饉
「享保十七壬子大変記」が記すウンカの大被害
2.天明の飢饉
人災でもあった天明の飢饉
3.天保の飢饉
商品・貨幣経済の浸透した「凶年違作日記・附録」の世界
「人間にとっての最大の災難は飢饉」
「凶作の年は必ずやって来る」
●第4章 噴火―「浅間大変覚書」を中心に
1.各地の被害
天明三年の浅間山噴火-社会の矛盾が鋭く表面化した時代
上野国高崎周辺の様子-降り続く灰や砂
信濃国軽井沢宿の様子-大石が燃えながら飛ぶ
江戸の様子-江戸川を流れる人・牛馬の死骸
2.「浅間大変覚書」を読む
3.復興に努める鎌原村
●第5章 地震―「弘化大地震見聞記」「善光寺地震大変録」を読む
1.大久保菫斎の体験
弘化四年の善光寺地震-火災・山崩れ・地滑り・洪水などの複合災害
「弘化大地震見聞記」に見る地震の発生
2.中条唯七郎の体験
押し寄せる避難民に困惑する
助かった人、助からなかった人
地震、火災に続く地獄の水責め
明暗を分けた災害後の村むら
頻繁な人足動員に困る百姓
地震後も参詣者で賑わう善光寺
藩への献上と褒賞
●おわりに
災害は天災である人災でもある
江戸時代には百姓たちが災害を記録した
村の共同性が復興を支えた
村の共同性は、矛盾と葛藤のなかで維持された
東京新聞:日本人は災害からどう復興したか 渡辺 尚志 著:
http://www.tokyo-np.co.jp/article/book/shohyo/list/CK2013042802000156.html