投稿者 スレッド: 暗闇の思想を 明神の小さな海岸にて  (参照数 418 回)

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暗闇の思想を 明神の小さな海岸にて
« 投稿日:: 6月 08, 2013, 12:37:56 pm »
書名:暗闇の思想を 明神の小さな海岸にて
著者:松下 竜一
発行所:影書房
発行年月日:2012/8/28
ページ:412頁
定価:2400円+税

1970年代「日本列島改造論」で全国の総合開発を進めていた時に周防灘開発計画、それに関連して九州電力の豊前火力発電所建設が計画された。福岡県豊前市その隣の町大分県中津市に住んでいた筆者松下竜一がちょっとしたきっかけでその反対運動に身を投じることになった。当時瀬戸内海は公害で海の汚染、空の汚染がピークになっていた時期。九州電力は地元に企業を誘致するための電力確保に躍起になって豊前火力発電所(250万kw/H)の建設を計画し莫大なお金をつぎ込んで地元の人々を懐柔していく。そんな中、反対運動の素人の松下竜一が苦難を重ねながら運動を継続していく課程を赤裸々に描いている。「暗闇の思想を」と「明神の小さな海岸にて」の2冊をまとめた本です。

この課程を追っていくと「自分たちの美しい海を次の世代に残したい」という素朴な市民の願いを貫いていくことの難しさ。九州電力という大企業のえげつないやり口、莫大な資本を投じての宣伝広告、5年後、10年後には電力が足りない。そのためには今のうちから準備をしていかないといけない。でも一般家庭の電力消費は20%、料金は企業向けの2倍。足りなくなるのは企業向けの電力のことを隠して全ての家庭で足らなくなると脅してくる。海を埋め立てるには漁業権を漁民から買い上げる。でも海水浴を楽しんでいる人、眺めて癒される人には何の権利もない。この構図は総合開発と呼ばれる国土破壊の共通したパターン、典型的な例を詳細に描いている。福島第一原発の事故があってこの本は復刻されている。原子力発電所の場合と同じ構図。まったく同じだましのテクニック、ウソを重ねている方法、電力会社、専門家、裁判所、検察、警察も同じ。40年前も今も全く変わっていない。

この本の中で反対運動の考え方の中で、支配者の理論に乗ってはいけない。地域エゴを追求しないといけない。日本のために電力不足はどうするというような問題は反対派が考えることではない。政府、地方公共団体が考えること。ここを間違うといけない。そのような土俵に乗ったら負けてしまう。自分の立ち位置をしっかり見極めること。そんなことを感じた。