書名:百年分を一時間で
著者:山本 夏彦
出版社:文春新書
発行年月日:2000.10.20
定価:690円+税
公衆電話の一通話は三分でした。この世の中の「用件」は一つ何々、一つ何々と
事前に整理して置ければ三分で話せないことはない。原稿用紙3枚で書き表せな
い大きな出来事はこの世にはないと言ってはばからない山本夏彦の社会主義を最
短距離でまとめた対談集です。
自分の会社の孫娘のような社員ととの対談、明治・大正・昭和の話を交えなが
ら現代を史観する。夏彦語録を書き綴ってみると「とかくこの世はダメとムダ」
です。全部無くしたら生きていても面白くありません。正義と聞いたら気をつけ
よ。正義と良心が嫌い。自衛隊は軍隊ではない。あれだけみんなに嫌われていて
いざとなったとき誰が国民を助けてくれるものか。持てるものから奪って持たな
いものに平等に分配するなんて美名です。若者が魅せられたのは自然です。
人間は時間と空間を絶無にしようとして絶無に近くした。それでも紙一重の時
空はあるよ。人間はそれすらなくそうとまだする。知恵あるものは知恵で滅びま
す。
社会主義・・・私有財産は盗みである
花柳界・・・・ホステスは芸娼妓の子孫
流行歌・・・・そらで歌える人いるの?
奉公人・・・・名士は新聞の無給の奉公人
オリンピック・金でなければメダルではない
給料というものは永遠に足りないものです。能力給といって仕事が出来る人に多く
与え出来ない人には少なく、さらに出来ない人はやめてもらえば、出来る人には五
人分、七人分貰える勘定です。けれども組合は出来る人に多く与えよとは言いませ
ん。出来ない人も辞めさせまいとする。会社も出来ない坊主を辞めさせません。こ
れが永遠に足りない理由です。能力給の方が良いと思いますか?有能は一人で、無
能は体勢ですから衆寡は適しません。
語彙を多く知っている、また歴史も教養もあり、今はちょっと難しい語彙も多い
が、なかなか含蓄のある語りです。昭和10年に東京は上方に屈してしまった。カ
フェの女給から、薄味まで。東京人を恥ずかしがるようになったのは昭和10頃か
らと、歴史(相当裏の裏の事情を交えながら)観を語られるとそうかなとなんとな
く納得させられるところがある。どのページから読んでもそれなりに面白い本です。
先日、こんな対談集を3冊まとめて買ってきた。じっくり読んでいます。