投稿者 スレッド: 道真  (参照数 2156 回)

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道真
« 投稿日:: 11月 14, 2012, 12:06:18 pm »
書名:道真(上)花の時
著者:高瀬千図
発行所:日本放送協会
発行日:1997/05/30
価格:2100円+税

書名:道真(下)邯鄲の夢
著者:高瀬千図
発行所:日本放送協会
発行日:1997/05/30
価格:2100円+税

菅原道真というと天神様、学問の神様、怨霊、で有名ですが、あまりその人と
なりなどについては余り知られていないのでないかと思います。この本は伝記
ですが、その中に道真の作った漢詩、和歌を引用しながらその当時を再現しな
がら書かれている。勿論フィクションですが、なかなか説得力のある筆力です。
 この本を読んで当時権勢を誇っていた藤原一門ではない出身道真が漢詩、文
章力で段々天皇の信任を得て頭角を現し、右大臣まで上り詰めてしまう。
そして晩年の大左遷(藤原時平の大反逆?)で太宰府に流されてしまう。その
地で生涯を終えるのですが、後世の人々が道真の怨念を沈めるために天満宮に
祭る。都に餓死、疫病、水不足等不幸なことが起こると道真の怨念によるもの
として御霊の祭りが行われるようになってきている。


「東風(こち)吹かば 思い起こせよ 梅の花 主無しとて 春を忘るな」
「君が住む 宿の梢を 行く行くも 隠るるまでに かえり見しやは」

「不出門」        門を出ず
 一従謫落就柴荊     一たび謫落せられて柴荊に就きしより、
 万死兢兢跼蹐情     万死兢兢たり跼蹐の情。
 都府楼纔看瓦色     都府楼は纔かに瓦の色を看、    
 観音寺只聴鐘声     観音寺は只鐘の声を聞くのみ。
 中懐好遂孤雲去     中懐は好し遂わん孤雲の去るを、
 外物相逢満月迎     外物は相逢う満月の迎うるに。
 此地雖身無検繋     此の地身に検繋無しと雖も、
 何為寸歩出門行     何為れぞ寸歩も門を出でて行かん。

 九月十日
 去年の今夜   清涼に 待し,
 秋思の詩篇   獨り 斷腸。
 恩賜の御衣   今 此こに 在り,
 捧持して 毎日 餘香を 拝す。

上記の和歌、漢詩を読んでも無念さがびしびしと伝わってくる。道真は政治家
としての才能より詩人として才能の方があったのでは政治家の清濁合わせ持っ
た懐の深さ、強心臓を持っていなかったのではないかと思われる詩が多いよう
に思う。
 現在では漢詩を読んでも(読むことができないかも)意味、言っていること
が理解できない人が多くなってしまったが、じっくりと読むと道真の才能もわ
かってくるのではないかと思う。ずっと残しておきたいものの一つではないか
な。
 最近は「お金儲けはヘタだけれど、いい人」ということは言われなくて、「
お金儲けが出来なければ」無視になってしまっている。(上の句)のみが問題
にされ(下の句)は全く無視されてしまっている。でも成果、結果のみではな
く、下の句が意外と本音があるのではないかと思う。そんな意味でも道真の漢
詩、和歌じっくり味わってみたいと思う。

道真については私のふるさとに桜天満宮という神社があります。そこの言い伝
えに下記のようなものがあります。子どもの頃から聞かされて育ってきたので
この本もちょっと道真を身近に感じながら読みました。(梅の花ではなく桜と
いうのがちょっと面白いかな)ここには天然記念物「稗田野の菫青石仮晶(19
22年指定)」があります。別称「さくら石」。
丸く長い石ですが、それを割ると中から桜の模様が出てきます。また名菓「さ
くら石」も近くの饅頭屋さんで作っています。現在では80歳を過ぎたお爺さ
ん、お婆さんの2人で作っているので1日200~300個を作るのがやっととか。
タイミングが上手くあうと買うことが出来ます。

桜天満宮
御祭神は菅原道真公。

道真公の近臣に稗田野鹿谷の高田若狭之介正期といふ忠義者がゐた。公が左遷
される時、公より多年寵愛の桜樹を形見として拝領し、故郷稗田野に移し植ゑ
た。
その年は見事な花が咲いたが、翌年には葉ばかりで開花せず、正期はもしや公
の身に何かと遙々大宰府まで駆けつけた。忠節に感じた道真は天拝山の土で自
像を作つて持たせた。正期は独鈷抛山の麓に祠を建て、像を祀つたのが始まり
と伝へる。

京都紀行 桜天満宮・積善寺
http://blog.goo.ne.jp/kue-biko/e/8c5e3edd08f20f677efc353f688ee484