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日本の歴史9 南北朝の動乱
« 投稿日:: 9月 20, 2020, 07:46:49 pm »
書名:日本の歴史9 南北朝の動乱
著者:佐藤 進一
発行所:中央公論新社
頁数:557ページ
発売日:2017.09.05(1974)
定価:1,238円+税

足利尊氏、直義、高師直、後醍醐天皇、北畠親房、新田義貞、楠木正成などな
ど登場人物が一杯でなかなか頭に入ってこない室町時代。明治維新もそんな感
じでわかりにくい時代。この室町時代のメインの出来事として建武の新政、過
去の天皇時代に戻れという懐古主義でこの国を治めようとした後醍醐天皇、で
もその試みは3年持たなかった。そして北朝、南朝、幕府の天下三分の時代が7
0年続く、そんな「南北朝の動乱」という本です。この本は中世、室町時代の
歴史を書いているが出色の出来で、著者への評価は凄く良い。
太平記、梅松論、群書類従他の古文書をちゃんと読んで理解し、そしてその時
代を探っていくという進め方、ちょっと難しい本ですが、論理的に書かれてい
て信頼が置ける。この本は戦後の中世史学を代表する佐藤進一氏の本で不朽の
名著とのこと。それ以前は南北朝時代史(:田中義成著)がバイブルだったと
のこと。

足利尊氏にしても、北朝の天皇にしても、南朝の後醍醐天皇にしてもそれぞれ
さまよえる人達、しっかりとした基盤があるわけでは無く、合戦で勝てば、京
都に、負けるとさまよい歩く。そんな力がない幕府、天皇、守護地頭が新しい
仕組みを求めて試行錯誤した70年足利義満の死までを南北朝は続く。一応北朝
に政権が移るが、そのときには将軍の幕府、そして引退した足利義満が日本国
王(太政大臣の上)を名乗る。

この70年が過ぎても足利幕府の支配体制が確立しなかった。結果的に応仁の乱
に続く、頼りない幕府が続いたことになる。じっくり見ていくと徳川時代など
に比べて、将軍家の財産、支配地はほとんど無い。大抵守護と地頭のご機嫌を
伺いながら政治を進めるしか手がなかった。守護、地頭にそっぽを向かれると
それで行き詰まってしまう。だから政治には手を出さず、道楽、文化に目覚め
たのかも知れない。登場人物も多いし、合戦などの出来事も一杯出てくるので、
頭の整理に困る内容ですが、なかなか良くかけていると思う。
先日太平記(吉川英治)を読んだが、これは勿論、フィクションで吉川英治と
いう語り部が奏でている叙情詩。この本は本格的な歴史書、慎重な筆遣いでか
なり堅い本です。何回か読み直さないと理解を深めることは出来ないかも知れ
ない。

最近電子本Kindle本に慣れていたので、紙の本を読むのは久しぶり、文字を大
きく出来ないので、昼間の明るいときしか読めなかったので、時間が掛かって
しまった。500ページを超える大作です。

建武の新政の失敗、「二条河原落書」これは名分ですね。名分過ぎて気分良く
読めるが中身が良くわからない。訳文も読んでみたいですね。

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南北朝時代史 - 国立国会図書館デジタルコレクション
https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/965780

書名:南北朝時代史;
著者:田中義成
出版者:明治書院
出版年月日:大正11

『梅松論』(文語版)
http://hgonzaemon.g1.xrea.com/baishouron.html
梅松論インデックス
http://muromachi.movie.coocan.jp/baisyouron/index.html

梅松論 | 京都大学貴重資料デジタルアーカイブ
https://is.gd/UZHLh8
校註日本文学叢書. 第10巻 - 国立国会図書館デジタルコレクション
https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/950236/106

二条河原落書
https://is.gd/Y2I3x9
【現代語訳】 二条河原落書
http://historykennel.blog.fc2.com/blog-entry-45.html


二条河原落書
此頃都ニハヤル物 夜討 強盗 謀(にせ)綸旨
召人 早馬 虚騒動(そらさわぎ)
生頸 還俗 自由(まま)出家
俄大名 迷者
安堵 恩賞 虚軍(そらいくさ)
本領ハナルヽ訴訟人 文書入タル細葛(ほそつづら)
追従(ついしょう) 讒人(ざんにん) 禅律僧 下克上スル成出者(なりづ
もの)

器用ノ堪否(かんぷ)沙汰モナク モルル人ナキ決断所
キツケヌ冠上ノキヌ 持モナラハヌ杓持テ 内裏マシワリ珍シヤ
賢者カホナル伝奏ハ 我モ我モトミユレトモ
巧ナリケル詐(いつわり)ハ ヲロカナルニヤヲトルラム

為中美物(いなかびぶつ)[注釈 1]ニアキミチテ マナ板烏帽子ユカメツヽ 
気色メキタル京侍
タソカレ時ニ成ヌレハ ウカレテアリク色好(いろごのみ) イクソハクソヤ
数不知(しれず) 内裏ヲカミト名付タル
人ノ妻鞆(めども)ノウカレメハ ヨソノミル目モ心地アシ
尾羽ヲレユカムエセ小鷹 手コトニ誰モスエタレト 鳥トル事ハ更ニナシ
鉛作ノオホ刀 太刀ヨリオホキニコシラヘテ 前サカリニソ指ホラス

ハサラ扇[注釈 2]ノ五骨 ヒロコシヤセ馬薄小袖
日銭ノ質ノ古具足 関東武士ノカコ出仕
下衆上臈ノキハモナク 大口(おおぐち)ニキル美精好(びせいごう)[注釈
3]

鎧直垂猶不捨(すてず) 弓モ引ヱヌ犬追物
落馬矢数ニマサリタリ 誰ヲ師匠トナケレトモ
遍(あまねく)ハヤル小笠懸 事新キ風情也

京鎌倉ヲコキマセテ 一座ソロハヌエセ連歌
在々所々ノ歌連歌 点者ニナラヌ人ソナキ
譜第非成ノ差別ナク 自由狼藉ノ世界也

犬田楽ハ関東ノ ホロフル物ト云ナカラ 田楽ハナヲハヤル也
茶香十?(ちゃこうじっしゅ)[注釈 4]ノ寄合モ 鎌倉釣ニ有鹿ト 都ハイト
ヽ倍増ス

町コトニ立篝屋(かがりや)ハ 荒涼五間板三枚
幕引マワス役所鞆 其数シラス満々リ
諸人ノ敷地不定 半作ノ家是多シ
去年火災ノ空地共 クソ福ニコソナリニケレ
適(たまたま)ノコル家々ハ 点定セラレテ置去ヌ

非職ノ兵仗ハヤリツヽ 路次ノ礼儀辻々ハナシ
花山桃林サヒシクテ 牛馬華洛ニ遍満ス
四夷ヲシツメシ鎌倉ノ 右大将家ノ掟ヨリ 只品有シ武士モミナ ナメンタラ
ニソ今ハナル
朝ニ牛馬ヲ飼ナカラ 夕ニ賞アル功臣ハ 左右ニオヨハヌ事ソカシ
サセル忠功ナケレトモ 過分ノ昇進スルモアリ 定テ損ソアルラント 仰テ信
ヲトルハカリ

天下一統メズラシヤ 御代ニ生テサマザマノ 事ヲミキクゾ不思議ナル
京童ノ口ズサミ 十分ノ一ヲモラスナリ

群書類従第1-2冊