書名:新・平家物語(一)吉川英治全集33巻
著者:吉川 英治
発行所:講談社
発行年月日:1967/8/20
ページ:486頁
定価:680円+税
書名:新・平家物語(二)吉川英治全集34巻
著者:吉川 英治
発行所:講談社
発行年月日:1967/9/20
ページ:505頁
定価:680円+税
書名:新・平家物語(三)吉川英治全集35巻
著者:吉川 英治
発行所:講談社
発行年月日:1967/10/20
ページ:463頁
定価:680円+税
書名:新・平家物語(四)吉川英治全集36巻
著者:吉川 英治
発行所:講談社
発行年月日:1967/11/20
ページ:500頁
定価:680円+税
書名:新・平家物語(五)吉川英治全集37巻
著者:吉川 英治
発行所:講談社
発行年月日:1967/12/20
ページ:492頁
定価:680円+税
書名:新・平家物語(六)吉川英治全集38巻
著者:吉川 英治
発行所:講談社
発行年月日:1968/1/20
ページ:467頁
定価:680円+税
義経が奥州に逃れて、その後、紀州、京都、近江を漂流する。各々の地では源氏の
残党が義経を盛り立てる。一方、頼朝は伊豆を拠点で謹慎の日々。後白河天皇の第
三皇子以仁王が平家打倒の「以仁王の令旨」出す。また源頼政ともに挙兵するが事
前に漏れていたためあえなく敗北、宇治川の戦い。しかし「以仁王の令旨」はその
後全国各地にある源氏の打倒平氏の錦の御旗となって源氏の残党の行動のよりどこ
ろとなった。源行家が伊豆の頼朝、木曽の義仲、全国の源氏を回って「以仁王の令
旨」を示す。頼朝も挙兵するが石橋山の合戦では大敗退、房総へ止むなく身を隠す
。一方木曽義仲は巴御前、葵御前と共に挙兵する。そんな緊迫した時に平清盛は死
んでしまう。
清盛が居なくなった平家は極端に勢力がなくなってくる。義理の弟時忠、清盛の息
子宗盛(清盛の貰い子)などがその後の平家を運営するも、時代はどんどん源氏の
有利になっていく。この新平家物語の中で、影の主人公として阿部麻鳥、蓬夫婦が
いる。強いものが勝ち、権力が支配する。金のあるもの、強いものに価値がある時
代。欲も得もなく、ただ身丈にあった生活を志す元伶人、崇徳天皇が皇子の頃の住
まいの井戸を守っていた阿部麻鳥、その後医者の勉強をして、力のない弱い庶民の
乏しい中に居を構え、医者家業、そして孤児たちを集めて育てている。蓬は義経の
母常盤御前のもと童女、義朝が平治の乱で敗れたとき、常盤御前ともに奈良吉野ま
でついて逃げたこともある。この二人が重要な場面では必ずさりげなく出てくる。
おごる平家と源氏側に立って書かれている平家物語ではあるが、善悪2元論では全
く理解できない深い深い人間の業というものを考えさせられる。
義仲の京都入り、平家の都落ち、後白河法皇とのやり取り、そして鎌倉から範頼を
総大将とする義仲の討伐、平家討伐、義経の鵯越、一の谷の合戦、屋島の戦い(那
須与一の弓で扇を落とす)、そして壇ノ浦の戦いで平家は滅亡する。でも源氏の武
将に対して平家の武将が必ずしも劣っていた訳ではなく、源氏の田舎侍よりはずっ
と教養も学問もあって人間的には出来た人々が平家には多い。しかし時代の流れ。
義朝の子に生まれたということで、何故平家を討ち滅ぼさないといけないか?そし
て極端に平家の世が悪い世、でも藤原氏が何代もに渡って政権を維持してきた平安
時代、その時代から平の清盛が政権の座に、時の運命で付いてしまった。義朝など
がヘマをやったため、止むなく清盛が政権の座に、でもすぐに太政大臣など引退し
てしまって福原の港、宋との貿易などに興味を持って、福原に常駐。その後は平家
の一門が政権の座につくことになるが、実は人材がそれ以外にいなかったのと、清
盛の身内を大切にする情の人だったことも影響があるのでは。一族の絆を大切にし
た。また藤原時代末期より平家一門の時代の方が民の生活は安定していた。平和だ
ったのでは(少なくとも戦はなかった)
その後平家を征伐した源氏にしても大義名分はなんにだったのか?ただ父義朝の仇
を打つことが目的、そして征伐が完了した後、義経を執拗につけ回す。範頼を殺し
てしまう。家族として一度も温かい家庭を持ったことがなかった義朝の異常とも言
える正確。結果的に鎌倉三代は短い期間で滅びてしまう。伊豆の一豪族の北条氏が
その政権を支配する。義経を讒言で失速させたとされる梶原景時もその後御家人三
浦氏などに滅ぼされてしまう。
奥州平泉の藤原氏も秀衡が亡くなってしまうと、その子泰衡では維持することがで
きず、鎌倉の前に滅びてしまった。
平家物語、平治物語、保元物語、源平盛衰記、義経記、吾妻鏡などと参考にしなが
ら吉川英治の視点を存分に加えた新平家物語、昭和25年から7年の歳月を経て完成
した本です。当時新聞連載小説として7年に渡って延々と発表された吉川英治の書
いた本の中では最長の長編小説です。昭和25年頃は戦後直ぐで世の中も乱れに乱れ
ていた頃、人々が生きて行くための大きな視点を与えた小説ではなかったのでは。
また著者も病気になったり、だんだん体調も弱くなってきていた時代だったとか。