投稿者 スレッド: 命もいらず名もいらず  (参照数 586 回)

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命もいらず名もいらず
« 投稿日:: 3月 01, 2013, 09:55:19 pm »
書名:命もいらず名もいらず(上)幕末篇
著者:山本 兼一
発行所:NHK出版
発行年月日:2010/3/25
ページ:360頁
定価:1800円+税

書名:命もいらず名もいらず(下)明治篇
著者:山本 兼一
発行所:NHK出版
発行年月日:2010/3/25
ページ:427頁
定価:1900円+税

西郷南洲遺訓には「命もいらず、名もいらず、官位も金もいらぬ人は、始末に困
るものなり。この始末に困る人ならでは、艱難(かんなん)を共にして国家の大業
は成し得られぬなり。」(西郷隆盛)とある。それを地でいったのが山岡鉄舟で
す。旗本の四男として生まれた小野鉄太郎高歩、のちの山岡鉄舟は新影流、北辰
一刀流などを学び、めきめきと剣術の腕を上げる。幕末の時代がうねる中、幕臣
として国家の行く末を意識し出す、単身西郷隆盛と面談し、江戸城無血開城の基
本合意を取り付ける。剣・禅・書の達人として知られた鉄舟は、人から頼まれれ
ば断らずに書いたので各地で鉄舟の書が散見される。

一説には生涯に100万枚書したとも言われています。幕末から明治と言う時代をま
っすぐにストレートに生きた一人の壮絶な人生を描く。高橋泥舟、勝海舟と並ん
で・幕末の三舟と呼ばれる鉄舟波瀾万丈の人生を作者はオーソドックスな歴史小
説スタイルで愚直に描いている。山岡鉄舟という主人公を描くにはこのスタイル
が一番良いのかも知れない。ただその場その場で全力をつくす一直線な人物、鉄
舟をいかんなく描いている。感動溢れる物語です。今の世には現れてこない人物
かも知れない。政治の世界をみても、実業界もみても「命は欲しい、名も欲しい
、官位も金も欲しい、利にさとい、ずる賢い」そんな人物ばかり、そんな人でな
いと出世できない。リーダーになれない時代。どこかで間違ってしまった。
この物語の中でも、飛騨高山から鉄舟が江戸に出て、剣術の道場で周りの人々の
動きに合わせて自分を忘れて、目立たないいけない。その為に強くならないと、
自分を認めさせないと焦りまくる時期。そして反省して自分を取り戻していくと
ころなど、深く考えさせれた。江戸という街の人の多い、競争の多い中では、鉄
舟のような人でも自分を失って、右往左往してしまった。人に酔うと自分を冷静
に保つことは難しい。でもそれに気づくのもまた大変。なかなか面白い作品だと
思う。