書名:靖国
著者:坪内 祐三
発行所:新潮社
発行年月日:1999/1/30
ページ:294頁
定価:1700 円+ 税
この本は東京雑学ばなしのような本です。靖国神社、九段に関わる明治から大
正、昭和の出来事、こぼれ話などを雑談風に語っています。靖国神社(明治に2年
)、明治神宮(大正9年)はそんなに歴史のある神社ではない。靖国神社は明治維
新の官軍の戦死者を招魂社に祭ったのが始まり、彰義隊、会津の白虎隊など官軍
と戦った人たちは祭っていない。また西南の役の西郷隆盛以下も。東郷平八郎、
乃木希典なども。日清、日露の戦いの頃は10万人程度。太平洋戦争で262万人と多
くなっているが、東京大空襲、広島長崎の原爆など犠牲者は祭られていない。
当初の招魂斎庭(御霊を招聘するところ)は昭和60年駐車場に変わっている。
初めて知った。この靖国のある場所は東京でも一番高台にあって、今も残る灯台
があった。上野の彰義隊との戦いのとき、大村益次郎がここの九段の丘の上から
指揮を執っていたとか。
その後明治20年頃まではサーカス、競馬、内国博覧会などのイベント会場に供さ
れていたとか。また相撲の天覧試合が700年ぶりに行われたのも靖国の境内。その
後奉納相撲、国技館が出来るまでと、国技館が焼けたときはここで相撲の場所が
開かれた。相撲は今では国技と言われているけれど、明治維新すぐのころは相撲
は野蛮人の象徴ということで、廃止という話もあったとか。それを国技までにし
た人は横綱前田山、高砂親方とか。
また太平洋戦争が終わったときGHQから靖国神社を破壊するような計画も出てい
たとか?そこで靖国神社では一大アミューズメントを建設して映画館、興業小屋
、劇場などを1000万円の予算を組んで計画していたとか。それを毎日新聞が事前
にすっぱ抜いたのでその計画は中止になって、破壊は免れたとか。
この本はイデオロギーとか思想とかは別にして、明治の東京の風景を九段界隈
を描いている。野々宮アパート、九段会館など。知らない東京の風景が見えてく
る。伝統と呼ばれているもの。例えば相撲、歌舞伎、宮中行事、天皇の御幸など
どれも明治20年以降にその原形が出来てそれを戦後伝統、伝統と言っているもの
がいっぱいあるということを教えてくれる。
靖国神社で力道山のプロレス興業(力道山は審判を行った)15000人の観客を集め
てが行われたことがあるとのこと。その2週間ほど後、代々木公園で怪人エンリキ
トーレスがバスと綱引きを行ったとか。子供の時にそんなニュースをみた記憶が
ある。昭和30年代のこと。雑学として面白い本です。