投稿者 スレッド: 科学・技術と現代社会  (参照数 479 回)

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科学・技術と現代社会
« 投稿日:: 4月 11, 2016, 12:26:57 pm »
書名:科学・技術と現代社会(上)
著者:池内 了
発行所:みすず書房
発行年月日:2014/10/10
ページ:383頁
定価:4200円+税

書名:科学・技術と現代社会(下)
著者:池内 了
発行所:みすず書房
発行年月日:2014/10/24
ページ:753-386頁
定価:4200円+税

科学者は「知りたい」技術者は「変えたい」であり、技術には限界があるが、科学の限界は存在しない。人が「知りたい」という欲求をやめない限り。また科学に善も悪もない。技術は物理的限界まで、科学は欲求のある限りどこまでも果てしなく続く。

技術は実現できる範囲を決める。仕様を作る。仕様が作れるものは実現できる。規格であったり、標準であったり、しかし仕様から外れたもの想定外である。あらかじめ決められた範囲を逸脱したときは手に負えない。

科学と技術が密接に絡み合って、社会で発展してきた。科学の軍事化、制度化、技術化、商業化という観点からも「科学と社会」の関係を掘り下げて問題提起をしている。科学や技術を規定し、限定するのは社会で在り、制度であり、商業である。「知りたい」科学、「変えたい」技術には社会的な責任が伴う。それを著者特有の論理で説明している。

巨大科学技術、遺伝子技術など人間が簡単にコントロールすることができないことについて詳細に述べている。この本はもともと工学系の大学院生の授業で著者が講義してきた内容をまとめたものです。
どんどん専門化していく科学、技術に総合的な視点を提供している。科学・技術を目指す若者は是非読んで欲しい本です。著者も言っているように広範囲に渡っていて整理できていない論理もあるが、概要的に科学の歴史、技術の歴史、そしてそれらば人間に与えて実害、リスク分析、ここ20年の科学・技術の実例を使った解説。特に福島第一原発事故は具体的に科学、技術の限界を述べている。これは迫力があり説得力がある。この部分を読んだだけでも再稼働などとても考えられない。即廃止すべき。

科学・技術で出来ることと出来ないことをはっきり言っている。いままでは「要素還元主義」要因・原因と結果が一致する。1:1で説明が出来る。ところが公害、原子力、環境。遺伝子工学などの複雑系は要因・原因・結果が一致しない。1:1で説明が出来ない。それぞえの要素が絡み合っている。その複雑系についてはまだまだ判らない事だらけ、殆ど判っていないと言って良い。したがってそんな複雑系の科学・技術については社会との関わり方、制度など十分考慮しないといけない。したがってそんな科学、技術に携わる人はどう教育していけば良いのか?

世界一、世界初が大好きな科学者、技術者。それが目的になってそれ以外のことに目が向かなくなってしまっている。科学・技術で実現できても「やってはいけないこと」この判断が出来る仕組みが益々重要になってきているのに。どんどん「要素還元主義」にのめりこんでいる。そんな問題提起をしている。ここまで幅広い分野を扱っている科学論は珍しい。一読の価値のある本です。こんな良書ですが、図書館で簡単に借りられます。誰も待っている人がいない。専門分化しすぎた科学の世界にこんな視野の広い人がいたのかと驚く。

科学・技術と現代社会 上:みすず書房
http://www.msz.co.jp/book/detail/07834.html
科学・技術と現代社会 下:みすず書房
http://www.msz.co.jp/book/detail/07835.html