投稿者 スレッド: 岩倉具視 言葉の皮を剥きながら  (参照数 359 回)

admin

  • Administrator
  • Hero Member
  • *****
  • 投稿: 59048
    • プロフィールを見る
岩倉具視 言葉の皮を剥きながら
« 投稿日:: 3月 01, 2013, 04:32:08 pm »
書名:岩倉具視
   言葉の皮を剥きながら
著者:永井路子
発行所:文藝春秋
発行年月日:2008/8/10
定価:1524円+税

江戸末期から明治にかけて、激動の時代、価値観が大幅に変わった時代。今から
見てもよく分からない。黒船がやって来て、尊皇攘夷、もともと歴史の中にいた
人々は攘夷(外国を追い払う)なんてできっこないと思っていた。儒教の浸透で
将軍家に対する尊敬の気持ちはあったが、天皇についてはもっともっと意識が下
だったようだ。明治、大正、昭和の皇国史観から見た見方で尊皇。この本の主人
公の岩倉具視も下級公家、もともと幕府を倒すなんて考えていなかった。有力大
名による連立制にして将軍慶喜が政治を行う。という構想を抱いてようだ。とこ
ろが流れというのは怖いもので、大政奉還(徳川慶喜は朝廷、島津、長州、土佐
、などをすぐに困って泣きついてくるだろうともって芝居をした)でも鳥羽伏見
の戦いで官軍が勝ってしまった。幕府軍の方が強いと思って官軍も戦っていた。
そんな流れの中を遠くで見ていたのが各藩の藩主達。どうせどこかでやられてし
まう。でも臣下を参加させておこうと、大久保、木戸、西郷など下級藩士が官軍
に参加。負けたときはそれらに切腹でもさせれば良いと思っていた。ところが藩
主を差し置いて幕府を倒してしまった。さて明治のスタート時点に気がついてみ
ると自分の居場所がなくなってしまった。家来はみんな政府軍に、藩主は面倒を
見なくてもよくなった。家来は政府に生活の面倒を見て貰うことになったとたん
。藩主は城、領地を返上ということに。これは仕掛けた維新の志士たちも予想も
しなかったことではないだろう。こんなきっかけで出来た明治維新。でも明治、
大正、昭和の時を過ごすと段々と理屈をつけて、さも先見の明のあった人達の活
躍で幕府を倒した。明治を作ったと。司馬遼太郎などその最たる者ですね。でも
永井路子の見方はちょっと違う。また岩倉具視の妹(孝明天皇の側室)、和宮な
ど女性たちの働きも、岩倉具視が世に出てきた縁も見ている。いままでとはちょ
っと違う歴史観も面白い。