書名:マオ(上)誰も知らなかった毛沢東
著者:ユン・チアン、ジョン・ハリデイ
訳者:土屋 京子
発行所:講談社
発行年月日:2005/11/17
ページ:562頁
定価:2200円+税
書名:マオ(下)誰も知らなかった毛沢東
著者:ユン・チアン、ジョン・ハリデイ
訳者:土屋 京子
発行所:講談社
発行年月日:2005/11/17
ページ:543頁
定価:2200円+税
毛沢東の伝記は今までいろいろ出ていいるが、この本を読むと毛沢東、中国共産党と中国のおぞましさが一段と明確に見えてくる。著者は文化大革命時代を中国で過ごした。この本は中国では発禁本です。上巻は毛沢東が中国共産党の中で権力闘争を勝ち抜いて行く過程を詳細に書いている。自分の今年か考えない男、日中戦争なんか頭にない。ソ連と日本に国民党政権(蒋介石)を倒してくれれば良い。
そしてソ連から銃、弾丸、戰車、航空機などの軍事援助と資金をスターリンにすり寄ることによって得ることに策略を巡らす、中国のこと、民衆のことなど頭にない。民衆などは何万人、何千万人死んでも良い。共産党内でも自分の勢力の拡張が出来るのであれば他派は殺しても良い。自分の部下達であっても同じ。これを一生続けている。自分さえ良ければ良い。こんな男、毛沢東を詳細な調査と、ソ連からの資料、ソ連人、日本人、国民党など400名以上の人たちにインタビューをまとめて書いている。
独裁者が権力を死ぬまで放さないことと保身に最大限の目標として、民の生活、娯楽、文化など一切考えない。自己中心的な保身、権力維持のために恐怖政治、密告、秘密警察を多用して、党幹部などがちょっと能力があると、必ず潰すという徹底さ。粛清という名で何百万人を殺す、強制収容所に送る。例えナンバー2と言われる人でも容赦しない。算数もよく分からない。軍の指揮もまるでダメ、国民党に負けてばかり、こんな人間が一時代のリーダーとして存在したことが不思議。日中戦争の戦後どさくさに紛れて、東北(満州)にソ連の侵攻したとき、ちょうど毛沢東の軍がいた。日本軍の残していた武器、弾薬、食料、陣地など手に入れた。そしてソ連の援助を引き出して国民党軍を段々追い詰めていく、特に国民党の蒋介石はアメリカに嫌われていた。そのすきに蒋介石を台湾に追い出した。
ソ連から軍事技術、核兵器技術を取得するため、食糧を飢餓輸出して、国内では7000万人を餓死させた男。いままで知らなかったことが一杯、ちょっと読むのがいやになるほどおぞましい本です。ヒットラー、スターリン、ポル・ポトなどに比べても桁違いの悪人?です。
戦後70年、毛沢東が亡くなってから40年、ちょっとだけ本当のことがしみ出してきたかな?と言う感じがします。毛沢東の事を好意的に書いてあるものは「中国の赤い星」をベースにしているけれど、これは毛沢東の広報の提灯本です。これをそのまま報道してきたマスコミは、「マオ」に対して批判的な反論ばかりすることでしょう。いままでの毛沢東像は全く違ったものになります。
こんな時代を生きてきた中国人、マナーの悪さが指摘されていますが、密告、監視社会が深刻な影響を受けているのでは?特に50才以上の人たちは、食料があって家があってようやく道徳、マナー、社会の底力があって始めてそれなりの常識も出来てくるのでしょう。