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源氏物語を知っていますか
« 投稿日:: 10月 02, 2015, 04:22:52 am »
書名:源氏物語を知っていますか
著者:阿刀田 高
発行所:新潮社
発行年月日:2013/1/20
ページ:491頁
定価:2000円+税

源氏物語は11世紀初め、紫式部によって書かれた長編小説。誰でも知っているが、本当に読んだ人、読み切った人は少ないのではないか?谷崎潤一郎、与謝野晶子、円地文子、瀬戸内寂聴等の訳本も読んでいないのではないでしょうか?でも日本を代表する古典、その源氏物語をこの一冊が古典の知識がなくてもその世界観を十分伝えてくれます。

才色兼備で裕福で、生まれも貴人そしてプレーボーイ光源氏を主人公にして描かれる恋愛模様、そして人間の歓び、哀しみ、苦悩、出世を目論む人々の権力闘争、親子の絆、現在にも通じる普遍的なテーマは人々に共感を呼ぶところです。

源氏物語は全編54帖、和歌が795首、登場人物は430人一大大ロマンです。物語の中だけではなく作者として時たま登場する紫式部の生き様、あらすじ、登場人物の解説などを交えて判りやすく紹介しています。玉鬘(たまかずら)10帖、光源氏が亡くなってからの宇治十帖、女の品定めの帚木(ははきぎ)などなど興味ある話題もいっぱい。紫式部の和歌はあまり旨くないという人もいるが、この登場人物に合わせた和歌を詠むというのは凄い才能だ。清少納言と比べられることも多い紫式部ですが、瀬戸内寂聴は紫式部は「人が悪い」それに比べて清少納言は「まっすぐだ」と。良い小説を書ける人はどうしょうもないくらい「人が悪い」悪知恵が働くから書けるのだと。清少納言は人が良いから随筆しか書けなかった。
著者阿刀田高は「あなたの代わりに五十四帖を読みました。」「これでダメなら「源氏」は諦めて下さい。」と書いている。また物語の本流と溜め池という表現を使って時代を超越した紫式部の堂々たる小説作法などを紹介している。時たま作者(紫式部)が顔を出す。この本一冊で源氏物語のアウトラインがすっかり判ってしまう良く書けた本だと思います。

阿刀田高『源氏物語を知っていますか』|書評/対談|新潮社
https://www.shinchosha.co.jp/shinkan/nami/shoseki/334328.html
源氏物語を知っていますか 阿刀田高著 上品なユーモアと精密な分析
http://www.nikkei.com/article/DGXDZO52884030W3A310C1MZB001/
源氏物語 与謝野晶子訳
http://attic.neophilia.co.jp/aozora/genjimonogatari/htmlfiles/index.html

目次    
初めにエロスがあった―桐壷・帚木
そっくりさんの系譜―空蝉・夕顔・若紫
二兎も三兎も追いかけて―若紫・末摘花・紅葉賀・花宴・葵
恋の責め苦をなんとしよう―葵・賢木
明石の雨に打たれて―花散里・須磨・明石
大河の脇に溜池がチラホラ―澪標・蓬生・関屋
今年ばかりは墨染に咲け―絵合・松風・薄雲
朝顔に背かれ心は雨模様―朝顔・少女・玉鬘
夕顔のあとにくすしき玉鬘―初音・胡蝶・蛍・常夏
姫君はいずれ桜か山吹か藤―篝火・野分・行幸・藤袴〔ほか〕