投稿者 スレッド: 文明崩壊  (参照数 278 回)

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文明崩壊
« 投稿日:: 2月 21, 2015, 11:31:03 am »
書名:文明崩壊(上)
   滅亡と存続の命運を分けるもの
著者:ジャレッド・ダイアモンド
訳者:楡井 浩一
発行所:草思社
発行年月日:2012/12/14
ページ:553頁
定価:1200円+税

書名:文明崩壊(下)
   滅亡と存続の命運を分けるもの
著者:ジャレッド・ダイアモンド
訳者:楡井 浩一
発行所:草思社
発行年月日:2012/12/14
ページ:547頁
定価:1200円+税

世界には、過去、大いに繁栄しながら、その後崩壊してしまった社会の遺跡があちこちに残っている。その崩壊した文明を一つ一つ例を挙げながらその原因、理由を探る旅です。例えば、マヤ(中米)、アナサジ(北米南西部)、イースター島(東ポリネシア)、ピケアン及びヘンダーソン島(南東ポリネシア)、ノルウェー領グリーンランド、現代のルアンダ、ドミニカ共和国及びハイチ、中国、オーストラリアなど著者はこれらの地に足を運び、栄華を極めたかつての社会に思いを馳ながら何故崩壊したのか、その過程を詳細に探り、いずれも同様の道を辿って来たと指摘する。崩壊の潜在的要因として、環境被害、気候変動、近隣の敵対集団、友好的な取引相手、環境問題に対する社会の対応という5つの枠組みを設定。

社会が繁栄すると人口が増える。人口が増えると、農作物の無理な増産やエネルギー消費量の拡大などで環境に過大な負荷が生じる。その結果、食糧・エネルギー不足となり、多すぎる人間が少なすぎる資源を巡って争うなど、共同体内部の衝突が激化する。飢餓・戦争・病気によって人口は減少し、社会は崩壊する――崩壊した文明はこういう過程を経て滅んでしまった。

逆に崩壊を遁れた例として、ニューギニア高地、ティコピア島(辺境ポリネシア)、江戸時代の日本、アイスランドがある。日本はトップダウンで森林再生を果たしたが、熱帯雨林の乱伐に精を出す国、森林破壊の輸出国とも名指ししている。

環境問題には自然の生息環境、野生の食料源、生物の多様性、土壌、エネルギー、真水、光合成の限界、毒性化合物、外来種、温室効果ガス、人口増加、人間が環境に与える影響の12の要因があると言う。これらに対して人間が出来ること、出来ないこと。集団が出来ること、出来ないこと。そして出来ることをしないことによって過去の崩壊した文明と同じ運命を辿る。それも一地域ではなくグローバルに。グローバルというのは良いことも悪いことも関連して起こる。したがってかつては一地域の崩壊で終わっていたことが連動して起こってしまう。

でも著者はその崩壊を食い止めることは人類に出来るはずだと期待している。地球規模の壮大な展開と仮説で世界を見渡せる本です。著者は生物学から地理学、鳥類学、人類生態学まで、広範な領域で研究を続けている人です。この本は警告書であると共に人類に期待、応援している本でもあります。でも愚かな人類が崩壊する可能性も否定していません。この歴史の教訓を生かせるか?大きく問いかけている本です。