書名:「世間」とは何か
著者:阿部 謹也
発行所:講談社
発行年月日:1995/7/20
ページ:259頁
定価:760円+税
なんとなく意識して居ない「世間」、「社会」という言葉が明治時代できた。現代では「社会」という言葉が使われているが、よく分かっているようで判らない「社会」。「世間」は死語?実は未だに「世間」に支配されて普通の人は生きている。社会というのは個人との対立概念。個人が確立している人達が集まって「社会」を作る。今の日本はそうだろうか?
「世の中」「浮き世」「世間」の変遷を万葉集から井原西鶴、夏目漱石、永井荷風を例にとって今でも生きている「世間」を考察している。そして「社会」という借りてきた言葉で世の中が動いているのではなく、「世間」を生きていることを説明している。では「世間」とは自分の関連する世界、したがって血縁、地縁、会社縁など比較的近しい関係、その中でどう振る舞うかを生きている。
世界で起きている悲惨な不幸な出来事でも気の毒に思うが、それは「世間」の内ではないから自分の事として気を揉む必要がない。だから能天気に生きていける。でも「世間」の内のことは直接自分に関わりがあるから、人の目は怖い、気にする。そして生きる規範はその目に見えない「世間」に向ける。
何となく知っている「世間」を真面目に取り上げた仮説。ちょっと面白い本です。