書名:壬申の乱を読み解く
著者:早川 万年
発行所:吉川弘文館
発行年月日:2009/12/1
ページ:194頁
定価:1700円+税
乙巳の変(大化の改新)で中大兄皇子が蘇我入鹿を討ったのが645年、百済が滅亡したのが660年、白村江の戦いが663年、天智天皇即位(中大兄皇子)668年、同じ年に高句麗が滅亡した。という東アジア情勢の緊迫した時代(朝鮮半島からの完全撤退、新羅の台頭、日本絶滅の危機)。672年壬申の乱が起こる。古代日本を大きく揺るがした皇位継承争いが壬申の乱と呼ばれている。その後50年たって書かれた「日本書紀」の壬申記が伝える壬申の乱とは?
その謎に迫る本です。歴代の壬申の乱の研究などを紹介しながら、判りやすく説明しています。特に大海人皇子、大友皇子の後継者争い。天智天皇(当時は大王と呼ばれている)が崩御に先立って、皇位継承の意志がないと吉野に引きこもった大海人皇子が、何故吉野を抜け出して、美濃、尾張(畿内からは東国端)から兵を集めて大友皇子と戦いに至った。そして美濃、尾張は当時大和朝廷にとってどんな位置を占めていたのか?吉野から2日で桑名に着いたときには2万人の兵士が集まったと。
日本書紀は勝者の書いた歴史書、そこには勝者に有利な内容、正統性を主張する偏った思想に彩られている。その中から公正な事実を探る。これが歴史を理解する醍醐味、そう言った意味でこの本はなかなか面白い。日本書紀に書かれたこと、書かれなかったことそんな事実を推理していく楽しさがある。