投稿者 スレッド: 新興衰退国ニッポン  (参照数 306 回)

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新興衰退国ニッポン
« 投稿日:: 9月 16, 2013, 06:45:46 pm »
書名:新興衰退国ニッポン
著者:金子 勝・児玉 龍彦
発行所:講談社
発行年月日:2010/6/11
ページ:277頁
定価:1600円+税

16分に1人が自殺。ここ10年の年間平均餓死者70人。労働者4人に1人が年収200万円以下。国民1人あたりのGDP世界ランキング2003年3位→2008年23位。金子勝・児玉龍彦という異色の組み合わせ。かつての経済大国と称された時代から「失われた30年」になろうとしている。雇用悪化、子供の貧困、餓死者急増、医療崩壊、地方壊滅…。その構造的原因と対策を提言している本です。

人間の活動はエビデンス・サイエンス(実証科学)では判らない、再現性のない事象が発生する。現象を解明出来てからでは「時すでに遅し」という取り返しのつかない過ちを犯さないために医療、貧困、雇用、介護、公共事業、産業、金融、知のルール、技術開発における現代日本の9つの病理をいちはやく見出し、警鐘を鳴らしています。

「失われた30年」の原因、最大の失敗は小泉、竹中の「構造改革」にあると著者は述べている。小泉元首相は、その前の中曽根元首相からの路線を引き継ぎ、アメリカ発の「新自由主義」という、「官から民へ」「効率第一」「すべては市場に任せればうまくいく」という方向に舵を切ってしまった。そして
医療から福祉、教育、雇用、産業、などをことごとく破壊した。派遣など有期雇用を解禁したことで、貧困者が急増し、医療改革や保険制度改革と相まって、満足に医療を受けられない人の数が数百万人にのぼり、4分の1の子供は給食費も払えず、出生率も激減している。

大学制度改革によって、職のない研究者が増え、企業も巨額の内部留保を貯めこみながら、自分で開発するという意欲もなく、今だけの結果を優先してM&Aに走り、技術を金で買えばいいと、自らで開発することはやめ、そのための人材の確保には走らず、研究者の雇用を控えてしまった。今や医薬品や環境エネルギーなど先端技術開発について、深刻な遅れをきたしている。

また、成果主義、自己責任論が横行したことで、誰も責任をとろうとしない無責任社会が生まれてしまった。今回の原発事故をみても今だけ、プレゼンテーションばかりに走り、誰も責任を取らない。自己責任とは責任を取らないこと。が実証されてしまった。国の責任、首相の責任、社長の責任、社員の責任、個人の責任。自己責任は全体を曖昧にしてしまった。責任の歯止めがなくなった。社員の責任でも会社として責任を取る(曖昧であっても責任を取る)。だから社員は思いきって仕事に励める。自己責任といわれた途端に腰砕けになってしまう。保身に走る。

責任を取りたくないので、根拠なき楽観論で大丈夫だと言い続ける。また後で訴訟を恐れるため、高度な難病、難治療。救急治療などを拒否する病院。困難なことにチャレンジするより責任を取らされない方へ走る人々。この本は東日本大震災前に出版されているが、東日本大震災後の立場のある人達の行動を予見している。

目次
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1. 医療 止まらない医療崩壊の現実-なぜ救急病院「たらい回し」は起こるのか
2. 貧困 貧困が国を滅ぼすーニッポン型貧困がもたらすもの
3. 雇用 有期雇用は人間と経済を破壊するー目先にこだわるツケは将来払わされる
4. 介護 行き詰まる高齢者介護制度―高齢化社会に舞っている絶望
5. 公共事業 公共事業という名の”麻薬”―ダム、原発、産廃処理施設、基地頼みの地域衰退
6. 産業 メイド・イン・ジャパンの没落―環境エネルギー革命にも乗り遅れて
7. 金融 100年に1度の危機がもたらす社会不安―実現できずに後退するアメリカの”チェンジ”と日本の”マニフェスト”
8. 知のルール コンピュータがもたらす優位性―グーグル、アマゾンの支配に搾取される知の財産
9. 技術開発 科学技術立国の黄昏―分断される技術ニッポンのDNA

新興衰退国ニッポン:確実に日本が滅びています - 金子勝ブログ
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