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父からの贈りもの
« 投稿日:: 11月 15, 2012, 12:01:20 pm »
書名:父からの贈りもの 
著者:高田都耶子
出版社:講談社
発行年月日:2000/06/08
定価:1,600円+税

今、東京国立博物館で国宝 薬師寺展を開催しています。元薬師寺管長高田好胤
さんの娘さんの本です。中身は父好胤さんのことが中心です。
高田好胤さんは戦後荒れ果てた薬師寺を復興するために写経100万経を目標とし
て写経納経供養料によって、金堂、西塔、中門、回廊、玄奘三蔵院伽藍を建立し、
その後も後継者に引き継がれ大講堂も建立しました。
 管長に就任する以前は修学旅行の高校生、中学生約500万人に薬師寺の案内を
行ったとか。

その中身は
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日本人の宗教的土壌を一言でといわれたら、それは「おかげさま」ですとお答
えします。何気なく私どもは「おかげさまで・・・・・」と言いますが、「佛
法は無我にて候」と申します。無我の思想から、このおかげさまという心と言
葉が生まれてきています。

兼好法師の「徒然草」の中に、「いづくにもあれ、しばし旅立ちたるこそ、目
覚むる心地すれ」という言葉がありますが、本当にその通りです。旅は人生に
いろいろな事を教えてくれます。

繰り返し、繰り返し
般若心経は大般若経六百巻の精髄のエキスだとよく言われますが、この心経約
二百七十文字の中に二十一回、無が繰り返されています。
一回話をして分かってくれる人にお話をするのは楽です。けれども分かってく
れない、分かってくれようとしない人達に話して分かってもらえるということ
は大変な苦労です。十回話して分からない人には二十回、二十回言っても分か
らない人には三十回、それでも分からない人には五十回、五十回で分からなけ
れば百回・・・・とお釈迦さまは彼等に分かりやすい言葉で、分かってくれる
まで繰り返されたのです。この繰り返しに堪える、これが慈悲です。

「父母恩重経」には「父母」と出てくるのは二十六カ所ですが、「父」と出て
くるのはわずか十一カ所です。それにひきかえ「母」で説かれているところは
実に三十三カ所もあります。
父親の立場で読むとまことにひきあわない思いがします。お釈迦さまのお気持
ちがお母さまに傾いておられることがよくわかります。

「人の此の世に生まるるは、宿業を因として父母を縁とせり。父にあらざれば
生ぜず。母にあらざれば育てられず」

「良き友は心の花の添木かな」(経書の中の孝経」

子供達が来世です
よく来世あるいは地獄・極楽などと申しますと、そんなバカなとせせら笑って
、まるで坊さんの迷信だとばかり、うそぶいてこれをひとつひとつ打ち消すこ
とが現代人の教養であり、資格であるかの如く思い違えている人があります。
これは現代人のとんでもない思い上がりであります。来世は必ずあります。そ
うでしょう、私どものかわいい子供、孫、曾孫、そしてその曾孫の子供や孫、
これは私どもの確実なる来世であります。これをさえ自分の来世と思えないと
は、それはたいへんな私どものエゴであります。
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子供の居ない人は後輩であったり部下であったり、自分の出会った人が来世に
なりますね。

高田好胤の著書、「心」(徳間書店刊)、「道」(徳間書店刊)、「母 父母恩
重経を語る」(徳間書店刊)他がありますが、いずれも優しく読みやすい、繰り
返し繰り返しを実践しています。
「父母恩重経」は仏教のお経ではないとの説もありますが、中身はなかなか含蓄
がある経です。吉川英治の宮本武蔵の最後の方にお杉婆さんとやっと心が通い合
うところに出てきます。たまには読み返してみたい文章です。