書名:福沢諭吉伝説
著者:佐高 信
発行所:角川学芸出版
発行年月日:2008/10/20
ページ:310頁
定価:1700円+税
「松下竜一 疾風の人」に福沢諭吉の又従兄弟増田宗太郎のことを書いている。その話が始まった。戦前福沢諭吉は「外国かぶれの売国奴」「鬼畜米英の思想家」と非常に評判が悪かった。その反対に増田宗太郎は西南戦争で西郷隆盛とともに亡くなっていることもあって、評判がすこぶる良かった。諭吉より10数才年下。そしていつも福沢諭吉を暗殺しようと狙っていた。その後福沢諭吉の思想に感化して慶応塾に入塾、そして西郷の元へ、帰らぬ人となってしまった。
戦後はこの2人の評価は全く逆転して福沢諭吉をほめる人は多くなり、又従兄弟の増田宗太郎を評価する人は殆どいなくなって。毀誉褒貶は世の常だけれど、大分中津藩の実家は隣どおしの2人、こういう面白いことも出てくるのです。ちなみ松下竜一もそのすぐ近くに生まれた人。
でも勝海舟なら「おこないはおれのもの、批判は他人のもの、おれの知ったことじゃない。」と開き直るであろう。福沢諭吉も増田宗太郎も同じかもいしれない。後世の人間が現代の価値観で評価すべき事ではないのかも、勝海舟なら「世間は生きている。理屈は死んでいる。」と。
福沢諭吉の弟子、つきあいのあった人たち(中江兆民、馬場辰猪、北里柴三郎、滴塾(緒方洪庵)、松永安左衛門、池田成彬、早川種三、犬養毅、尾崎行雄、岩崎弥太郎、金玉均)の伝説をつぎつぎ紹介している。ほとんど人の伝記などを読んでいるのであまり新しい感じはしなかったが、朝鮮独立運動の金玉均を自宅で匿ったり、支援していたことははじめて知った。幅広い交友関係である。福沢諭吉は実業にも政治にも手を出さなかった。そして常に冷静に「平熱の思想家」と佐高氏言っているが、どんなときでも冷静、師緒方洪庵が亡くなった時には福沢らしからぬ動揺があったが。激高した相手でも何故か収まる。戦後福沢諭吉を褒めたのが丸山真男とか?丸山真男は殆ど興味がなくて読んだ本も少ない。