投稿者 スレッド: 感染症の日本史  (参照数 1924 回)

admin

  • Administrator
  • Hero Member
  • *****
  • 投稿: 59138
    • プロフィールを見る
感染症の日本史
« 投稿日:: 1月 08, 2021, 05:52:31 pm »
感染症の日本史 - つみかさね
https://3yokohama.hatenablog.jp/entry/2021/01/08/173406

書名:感染症の日本史
著者:磯田 道史
発行所:文藝春秋
頁数:176ページ
発売日:2020/9/18
定価:880円 Kindle版

この本は新型ウィルス、コロナウィルス対策にも通じるノウハウ、事例などを
歴史の資料平安時代の史書、江戸時代の随筆、100年前のスペイン風邪の事。
政治家や文豪の日記など歴史の知恵を集めた本です。

昔のウィスルも初めて出てきた時は未知の新型ウィルス、コロナウィルスもや
っぱり新型ウィスル、経験のないことでは同じ、そんな新型コロナに先人はど
うやって来た。天然痘に対する国家鎮護の大仏建立、国分寺の設立、藤原不比
等の息子達藤原4兄弟が天然痘にかかって無くなっている。日本の感染症の殆
どが日本発ではなく、新羅、中国など外国からの伝染で流行っている。コレラ
などはペリーの来航で流行りだした。

今回のコロナウィルスで参考になる事例はスペイン風邪、原敬総理も罹患して
いる。結構重い、その他山県有朋(80以上で)、秩父宮は17歳位で、また昭和
天皇の皇太子時代、政治家皇族なども罹患し、亡くなった人もいる。原敬総理
は軍事費を拡張するために、その為の根回しで毎晩のように晩餐会等の食事、
酒で体力も弱っていた。そして後遺症も含めて4,5ヶ月不調を訴えている。ま
た不調で御前に出られなかったことも。
この時のスペイン風邪の発症は、シベリア出兵でシベリアに派遣した兵隊達が
国内に帰還した時から流行していった。

世界の大量死主な原因
感染症
スペイン・インフルエンザ 5000万人 1948-20
ペスト(黒死病)     7500万人 1347-51

戦争
第一次世界大戦       900万人  1914-18
太平天国の乱       数千万人  1851-64
第二次世界大戦      5000万人 1939-45

ホロコースト(虐殺)
ナチのユダヤ人虐殺     600万人 1933-45
スターリンによる粛清    1200万人 1937-53
蒙古族による中国農民虐殺  3500万人 1311-40

こう見てみるとスペイン風邪は凄いウィルスだったんですね。今で言うところ
のインフルエンザだった。そしていろいろな人の日記とか、随筆とかを読んで
みると口蓋(マスク)をすること。手洗いは推奨されていない。(まだ気がつ
いていなかったことか)学校は普通に通っている。また習い事なども、図書館
も閉鎖されていない。スペイン風邪にかかった人は隔離(自宅で)されて直れ
ば出て行く。一度掛かった人は重要な役割を果たしていた。確率的に2度は掛
からないので、病人の世話などを行っていた。一読の価値のある本です。

【本書目次より】
*******************
第一章 人類史上最大の脅威
牧畜の開始とコロナウイルス/ペリー艦隊が運んできた感染症/スペイン風邪
は波状的に襲ってきた ほか
第二章 日本史のなかの感染症――世界一の「衛生観念」のルーツ
「最初の天皇」と疫病/奈良の大仏は天然痘対策?/疫神を歓待する日本人/
江戸の医学者の隔離予防論 ほか
第三章 江戸のパンデミックを読み解く
すでにあった給付金/薬をただで配った大坂の商人たち/上杉鷹山の患者支援
策 ほか
第四章 はしかが歴史を動かした
「横綱級」のウイルスに備えるには/都市化とパンデミック/麻疹が海を渡る
 ほか
第五章 感染の波は何度も襲来する ――スペイン風邪百年目の教訓
高まった致死率/百年前と変わらない自粛文化/「「感染者叩き」は百害あっ
て一利なし ほか
第六章 患者史のすすめ――京都女学生の「感染日記」
日記が伝える「生きた歴史」/ついに学校が休校に ほか
第七章 皇室も宰相も襲われた
原敬、インフルエンザに倒れる/昭和天皇はどこで感染したか?/重篤だった
秩父宮 ほか
第八章 文学者たちのスペイン風邪
志賀直哉のインフルエンザ小説/宮沢賢治の“完璧な予防策”/荷風は二度か
かった? ほか
第九章 歴史人口学は「命」の学問 ――わが師・速水融のことども
数字の向こう側に/晩年に取り組んだ感染症研究 ほか

本書より
*****************
欧州各国のような「強制措置」ではなく「要請→自粛」という形です。「行政
からのお願い」と「国民の自主規制」。法律家からは「法的根拠が曖昧」との
批判もありますが、柔軟性もあります。この方式の吉凶はまだわかりません。
衛生政策で有名な後藤新平は、「寝覚めよき事こそなさめ、世の人の、良しと
悪しとは言ふに任せて」と詠みました。私はこの文章を書くときに、部屋にこ
の後藤の歌の掛軸を懸けていました。緊急時のリーダーは、世評は放置し、仁
慈・良心に従って断行する必要があります。

この国には神が「八百万」もいて、神はカジュアルです。さらにいえば、?が
許されやすく、世襲が権利を正当化されやすい。神話学風に分析すると、そん
なこの国の特性もみえてきます。 また、人間が疫神を歓待する→疫神が人間
に感染免除をしてくれる、という疫病神と人間の互酬=なれ合いの存在も面白
いものです。日本人は疫病神さえ買収してしまうのです。そこには、疫病神に
感染免除を期待する「甘えの構造」もありますが、疫病神との「共生」思想も
みることができます。疫神は怖いが、歓待すれば買収・契約・交流できる「客
人」であり、日本人にとって、疫神は仇敵ではなかったのです。
地球を一つにみて、最善と思われる対策事例があれば、どんなに手間でも、政
府は、力の限り、それを真似たほうがいい」。これが歴史の教訓です。