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剣難女難
« 投稿日:: 8月 02, 2020, 10:48:10 pm »
書名:剣難女難
著者:吉川 英治
発行所:講談社
頁数:540ページ
発売日:1990年09月04日
定価:99円 Kindle版

大正14年に創刊された国民雑誌「キング」に発表されたこの作品で、従来の幾
つかの筆名に別れを告げ、新たに吉川英治が誕生した。――美男で剣を見るの
さえ身体がふるえる春日新九郎が、兄の仇、富田三家随一の名人、鐘巻自斎を
相手に戦うまでの数々の辛苦と、剣難女難。――この1作が呼んだ反響、つづ
いて生れた幾多の名作。本書は、吉川文学の輝かしい原点といえよう。

幼い頃、母と外出先で占って貰った春日新九郎は「剣難女難」の相があると言
われそれがトラウマになって、剣を見るのも剣術をみるのも自然に体が震えて
おびえてしまう。兄は名だたる剣豪で剣道場主、この物語の舞台は、丹後の宮
津藩、福知山藩から始まる。大藩の宮津藩(7万石)福知山藩(3万2000石)の
小藩、何かにつけて宮津藩の横暴が目立った。兄の重蔵が宮津藩との交流試合
において、大怪我を負ってしまう。京都でも北部のマイナーな地方が出てくる。
江戸に出てくる途中では園部、亀岡などの剣豪とも試合をして技を磨きながら、
兄の仇である鐘巻自斎を倒すため、新九郎の修行の旅が始まった。

春日新九郎の修行の旅そこには剣難女難が待ち受けている。気弱で軟弱な青年
の成長物語、展開のリズムが良いので、ついつい読み進めてしまう。吉川英治
の語り部にどんどん載せられてしまう。物語の展開はさすが、それも早い展開
で飽きさせない。(現代でも十分通用するのではないねんかな)それも中身の
ない速さではなく、十分楽しめる物語展開です。鐘巻自斎というのは他の人の
物語でも出てくる人物ですが、戦国時代の有名な剣豪、福知山藩が3万2000石
になったのは1669年、ちょっと合わないような気もするがここでは突っ込まな
いでおこう。

大正時代の作品とは思えない新鮮さがある作品です。大作家の片鱗がうかがえ
る。話を作るのがうまい。99円で楽しめます。