書名:黒染の剣(上)
著者:澤田 ふじ子
発行所:講談社
発行年月日:1984/2/28
ページ:254頁
定価:1100円
書名:黒染の剣(下)
著者:澤田 ふじ子
発行所:講談社
発行年月日:1984/2/28
ページ:253頁
定価:1100円
室町幕府兵法師範役、三代吉岡憲法直賢は戦国時代の終わり頃、黒染屋に転身した。新時代の武器(鉄砲)の威力を知ったからとも言われているが、京都は新しい文物いつも敏感に対応してきた。吉岡流の剣術を教える道場も残しながら、黒染屋の稼業に重点を移しつつあったころ。長男の清十郎に家督を譲って引退をする。弟伝七郎も黒染屋の染色材料を求めて丹波の山国郷など訪れていた。その山国郷の豪農の娘寿々は皇居の女官の見習いとして京都にやってくる。
伝七郎に出会ってすぐに盗賊にさらわれてしまう。時代は関ヶ原の戦い間近というとき。盗賊にさらわれた寿々が物語の陰の主役。宮本武蔵の関ヶ原の戦いへの西軍への参加、敗北落ち武者として逃亡途中にある修験者に助けられてその修験者を師として豊前で修行に励む。吉岡流に挑んでいく宮本武蔵。この場面を吉岡側から描いている作品。無名の宮本武蔵にとっては他流試合は名を上げるための大切な戦い。しかしもう時代は剣術の時代ではないと染め物屋商売に励む吉岡。この対応の仕方が面白い。また宮本武蔵についてはいろいろ分からないところがあるが、作者流の推論で物語をすすめている。