投稿者 スレッド: 宮本武蔵  (参照数 278 回)

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宮本武蔵
« 投稿日:: 8月 30, 2017, 05:12:55 pm »
書名:宮本武蔵
著者:司馬 遼太郎
発行所:朝日新聞出版
発行年月日:2011/10/30
ページ:248頁
定価:580 円+税

宮本武蔵というと吉川英治の宮本武蔵のイメージがあって、吉川フィクション
が史実だと思ってしまうところがあるが、吉川英治の創造した宮本武蔵ですね。
この本は宮本武蔵の一生を年代と共おいながら、その時々の事件、出来事など
を説明、分析しながら真の宮本武蔵に近づこうとした。

何故か?織田信長、豊臣秀吉は兵法者を重視しなかった。剣術家などは相手に
していない。一対一で戦う戦い方は完全に時代遅れになっていた。集団で鉄砲、
大砲を使うか?が戦術として登場してきた時代。剣の道を極めるという宮本武
蔵は遅れてきた天才と言えるだろう。たまたま徳川家康が剣術家を大事にして
柳生、小野などを指南役に召し抱えた。宮本武蔵は強欲までの出世主義で、「
直参旗本3000石以上でないと仕官しない」と自分の価値を高く置いていた。そ
のためいつまでも仕官は出来ない。肥後熊本細川藩に顧問(石高はない。)で
一生を終わることになった。
尾張徳川に仕官話が出たとき、尾張徳川の指南役柳生宗家は武蔵の天才をさし
て、武蔵の剣は彼以外出来る者がいない。後継者が出来ない。指導で武蔵の剣
の奥義に達することは出来ない。後年武蔵の後継者は出ていない。幕末にはや
った北辰一刀流などは天才でなくても習得できる。天才は一代で終わる。結果
的に本人としては寂しく終わるしかないようだ。一時しのぎに英雄、天才は向
いているが、恒常的な仕事はできない。武蔵の他の才能、臨済禅と剣術、絵を
描く、彫刻を彫るなど一流の才が見られる。どこかの時点で進み方の選択を変
えていればまた違った人生が送れたのではないと思える。一生の内30数回の試
合で負けたことがなかったと言われているが、負ける試合はしなかったといっ
た方が正しいだろう。「見切る」ということが旨かったと。

宮本武蔵をまた違った見方が出来る本です。