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義経
« 投稿日:: 8月 27, 2017, 04:58:05 pm »
書名:義経(上)
著者:司馬 遼太郎
発行所:文藝春秋
発行年月日:2004/2/10
ページ:490頁
定価:667 円+税

書名:義経(下)
著者:司馬 遼太郎
発行所:文藝春秋
発行年月日:2004/2/10
ページ:498頁
定価:667 円+税

NHK大河ドラマ化・1966年(昭和41年)で放送された源義経は村上元三原作で
した。日本人が古来より大切にしてきた義経のイメージそのままの強く優しく
美しい理想のヒーローがそこにいます。しかしこの司馬遼太郎の義経は全く違
って「いくさバカ」、「政治能力ゼロ」、「情緒不安定」、「女好き」、「コ
ミュニケーション能力ゼロ」と英雄像はどこにもありません。

また頼朝も従来からの源氏の血、親兄弟であっても血で血を洗う。兄弟であっ
ても敵という描き方がされています。平家は清盛を始め、兄弟、一族郎党を大
事にして清盛の出世と共に身内も出世する。源氏とは全く違った一族。西日本、
東日本の気質で説明できるかも。東は一所懸命。土地にこだわる。そして相続
の仕組みがキッチリしていないので家族、一族内で争いになる。その争いを調
停するのが幕府。

鎌倉時代の政治体制は土地は地元の豪族、百姓のもの、鎌倉幕府は税金を取る
権利を持っているだけ。やくざの世界の縄張りを持っている。そして関東各地
の豪族の連合体の中で頼朝が神輿として担ぎ上げられている。(やくざの親分
)という図式。これは徳川幕府になっても本質は同じ。幕府は土地の保有者で
はない。税金(年貢)の徴収者。したがって、微妙なバランスの上に乗ってい
る。バランスが崩れると一気に崩壊する危機を常に持っている存在。鎌倉幕府
が成立する以前の頼朝は北条氏位しか自分の意志で動かせる部下はいなかった。
それも北条政子の父時政に遠慮しながら。

そんなとき平家のとの戦いで義経に大活躍されると頼朝の存在自体否定されか
ねない。そんな心情と行動が説得力をもって描かれている。義経の常識外れの
行動は当時にあってはタブーだらけ。那須与一の弓にしても扇を射止めたとこ
ろまでは源平の双方が喝采をしているが、その後平家の太鼓持ちを射殺したの
はNG。壇ノ浦の戦いでも平家の船の水夫(船の操作者は殺さないという暗黙の
了解があった)を狙って殺してしまう。既存の常識の破壊者が天才といわれる
が、実は大きな問題のある人という側面もある。この義経はどちらかというと
今までの好意的な見方からすると全く逆になっている。村上元三の義経と比べ
て読むのも面白いかもしれない。