書名:臥竜の天(上)
著者:火坂 雅志
発行所:祥伝社
発行年月日:2007/11/10
ページ:413頁
定価:1900円+税
書名:臥竜の天(下)
著者:火坂 雅志
発行所:祥伝社
発行年月日:2007/11/10
ページ:403頁
定価:1900円+税
遅れてきた戦国時代の梟雄・伊達正宗の半生を描いた作品です。天地人では直江
兼継が主人公そして正宗は迷惑な隣人として描かれていた。今度は正宗が主人公
、でもぱっとしたところがない。どちらかというと戦でも精彩がない。結構負け
ている。それも完璧に。それほど強い武将ではなかった。
そのくせ火のないところに煙を立てて、常に天下転覆を狙う油断ならない人物と
して描かれている。仙台の人から見るととんでもない正宗像である。秀吉に対し
ては南部藩内の一揆勢をあおって撹乱し、関白豊臣秀次に取り入って秀吉亡き後
の天下を狙う。秀次が失脚するとつぎは娘婿の徳川忠輝をそそのかして将軍家を
かきまわした。
それも失敗。そして支倉常長を使わして天正遣欧使節団に、スペインやメキシコ
と手を組んで援軍の支援を得て天下とりを狙ったと。まったく「懲りない奴」と
いう印象に描かれている。豊臣家を中心として天下統一を図る石田三成は中央集
権主義、それに対して徳川家康は幕藩体制という地方分権主義。
それに対して正宗は外国勢の介入を図ってでも天下をとる。そんな下心が見え隠
れする。またいろいろな場面での奇想天外なパーフォーマンスは驚愕に値する。
流石伊達者だ。上杉の「義」に対してあくまで「利」を求めて人間くさく欲得で
行動する正宗が描かれている。火坂雅志の作品は自分の作品の文章を違う作品に
も持ってきている。特に人物のひととなり、逸話など全く同じものが使われてい
ると思われるところもある。(ちょっと興ざめしてしまう)