書名:季節のない街 山本周五郎長編小説全集第二十四巻
著者:山本 周五郎
発行所:新潮社
発行年月日:2014/12/20
ページ:394頁
定価:1500円+税
場所も時間も全て架空の「季節のない街」特定の場所が設定されているわけではない。しかし都会の中にどこでもありそうな「吹き溜まりの街」これだけいろいろな人が集まるかと思うくらいの貧民街が舞台です。著者の作品で『青べか物語 』というのがありますが、これは浦安が舞台、田舎の港街、海がある。しかしこの「季節のない街」は都会版、海もなければ田圃も畑も山もない。
極貧者が寄り集まって自然発生的に出来た「街」そんな街で起こる数々の逸話15が用意されている。それぞれの話は短編ですが、登場人物は重複したりしてその街を描いている。個性豊かな住民たち、そして気取り、格好なの全くかまわず赤裸々な人間が描かれている。
極貧で人の目など気にしていられない。でもお金はないけれど人情には厚い。本音で生きている人々を生き生きと描いている。昭和にはそんな街も東京にもあった。何となく懐かしい感じにする作品です。様々な話の中の断面の中に深い人生の実相を捉えている。
『季節のない街』は黒沢明監督により、電車の運転手の六ちゃんが運転する電車が線路を走る音『どですかでん』のタイトルで映画化された。