投稿者 スレッド: 彦左衛門外記 花筵 山本周五郎長編小説全集15巻  (参照数 274 回)

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彦左衛門外記 花筵 山本周五郎長編小説全集15巻
« 投稿日:: 11月 14, 2014, 09:46:28 am »
書名:彦左衛門外記 花筵 山本周五郎長編小説全集15巻
著者:山本 周五郎
発行所:新潮社
発行年月日:2014/5/25
ページ:443頁
定価:1600 円+税

大久保彦左衛門の武勇、「天下のご意見番」このほら話が世間に流布したのは何故か?このメカニズムを歴史とは何か?史実とは何かという視点でおもしろおかしく描いている。世の中の史実と言われるものの虚偽と虚妄を喝破した諧謔に富んだ物語。大久保彦左衛門翁を大伯父とする五橋数馬が主人公。彦左衛門本人が今までの戦さでは常に弱腰で逃げ回っていた。そして手柄など立てたことがない。家康から「天下のご意見番」などと書き付けなど貰っていない。

と言っているにも関わらず、数馬が数々の武勇の逸話を創作する。そして彦左衛門にたきつける。そして70歳を過ぎた耄碌も影響してか、段々数馬の話を本当だと信じ込んでしまう。時代は家光の時代。生まれたときから将軍家の最初の将軍。家光以外は全て臣下の時代。それまで家康、秀忠は部下だけではなく、同僚、上司の関係だった。

そんなとき天下のご意見番がしゃしゃり出て、外様は油断がならない。外様に気を付けろと江戸城に乗り込んでいく。数馬の出世のためにつくった作り話に、その時代を生きた人が少なくなった時、それが段々と本当の事だと信じていく。そんな詭弁も通じてくる。なかなか面白い作品。人間味豊かな物語


もう一つは大垣藩の藩士陸田信蔵の妻お市(大垣藩老職奥村喬所の娘)の半生を描いている。藩の中の不正を暴こうとする陸田信蔵、また世継ぎを巡ってのお家騒動、大洪水、動乱の時代ひとりの女として、妻として、親としてお市が果敢に武士の妻として成長していく過程を描いている。底流に山本周五郎の生き方、考え方が流れている。人間を見つめた冷静な目が感じられる。

本書より
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「人間にはそれぞれ責任がある」お市は良人のこう言った言葉を思い出した「この世に生きている以上、人間はみな自分や自分の家族の他にも負わなければならない責任と義務がある。家族そろった平安も生活は誰にも大切だ。それを毀したり失ったりすることは誰にも辛い、然しそれが大切であればあるほど、その秩序が紊れたり破壊されたり事は防がなければならないだろう、これはどんなに小さく見積もっても人間全体の義務だ」良人はいつかこう言ったし、その言葉どおり実行した。

これだけはと思い切った事に、十年しがみついていれば、大抵ものになる