書名:疾走
著者:重松 清
発行所:角川書店
発行年月日:2003/8/1
ページ:492頁
定価:1800円+税
弱い父親と弱い母親に育てられた少女エリ、両親は少女を道連れに自宅に放火心中、少女は逃げ出す。弱い父親と弱い母親に育てられた少年シュウジ、地元有数の進学校に通う兄の四人家族だった。町に一大リゾート開発の話が持ち上がった。優秀だった兄は高校にも通わず、近所で放火を繰り返す。どこかで心が壊れてしまった。寡黙な父も気弱な母もどんどん壊れていく。犯罪者の弟として世間、仲間の目は冷たい。14歳のシュウジがどんどん壊れていく。どこにも安息の場はない。犯罪者への道をひた走りに走る少年シュウジ、少女エリを描いている。一家離散、いじめ、暴力、セックス、バブル崩壊の爪痕、殺人……聖書の言葉と共に心に突き刺さってくる文章、まさに現代の黙示録です。気が落ち込んだときには読まない方が良い本です。
本書より
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「孤独」と「孤立」と「孤高」の違いは何だろう。
「仲間が欲しいのに誰もいない『ひとり』が、『孤独』。
『ひとり』でいるのが寂しい『ひとり』が、『孤立』。
誇りのある『ひとり』が、『孤高』。」
「ひとつになった。
『ひとり』と『ひとり』が、ひとつになった。
ひとつになった『ひとり』と『ひとり』は『ふたり』だった。
強くなれる―と思った。強い『ひとり』になれる。」