書名:雲を掴め 富士通・IBM秘密交渉
著者:伊集院 丈
発行所:日本経済新聞社
発行年月日:2007/11/18
ページ:198頁
定価:1700円+税
富士通・IBMの15年間にわたる日本のコンピュータ産業史上最大の紛争にまつわる話。そして、企業間の交渉過程について。当時当事者としてこの交渉に当たった鳴戸道郎氏が、フィクション小説として書かれた本です。1997年4月30日のIBM-富士通との間で「事件」の終結合意書が調印され、守秘義務が消滅したため、当事者が語ることが可能になったことになった。著者は富士通の専務・副会長を歴任した鳴戸道郎氏(伊集院丈)
物語は 「日立の社員がFBIに逮捕され、手錠をかけられている映像が全米のテレビで流された。逮捕の時点では、容疑者に過ぎない。この見せしめの様な逮捕をテレビで放送するとは、FBI、米国政府の意図的なものが存在すると言えないか。FBIの囮捜査を発端とするIBMスパイ事件は、大きな衝撃を日本人に与えた。」そんな場面から始まる。日米貿易摩擦が激しい、1982年の初夏のことである。その裏には本命の富士通の息の根を止めようという画策があった。
富士通は、IBMの汎用機の互換機路線を走り、ハードではIBM以上に性能もよく評判も良かった。この富士通の海外進出に神経をとがらせていたIBMの戦略とはIBMのOSのソースコードを富士通が流用している。(互換機を作る以上止む得ないところもある)そのライセンス料を過去にさかのぼって払え、そして今後の商談が発生したときには顧客リストを渡せというIBMの要求。その要求に15年をかけて秘密交渉の真実を語っている。
今からみると秘密交渉の内容はコンプライアンス違反にあたるものもあるが、当時の情勢では止む得ないところもある。この業界にいた人にとってはとても懐かしい話題、でも部外者からみれば、何がどうなってどう争っていたのか?何が問題だったのか?ちょっと判りにくいところがある。これは当事者という視点が邪魔をしているのかもしれない。
そう言えばこの当時あったコンピュータ会社も大半が撤退してしまっている。懐かしい名前が出てくる。コンピュータの名前も。今は昔の物語という感じがしてしまう。
IBM-富士通紛争の当事者が四半世紀ぶりに沈黙を破り、秘密契約締結に至る厳しい交渉経緯を出版
http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/COLUMN/20071115/287255/【25周年記念特別寄稿】初めて明かす、「IBM・富士通紛争」と徹底報道の舞台裏
http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/COLUMN/20061012/250584/?ST=system