投稿者 スレッド: 応仁秘譚抄  (参照数 327 回)

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応仁秘譚抄
« 投稿日:: 10月 16, 2013, 06:37:12 pm »
書名:応仁秘譚抄
著者:岡田 秀文
発行所:光文社
発行年月日:2012/5/20
ページ:270頁
定価:1600円+税

歴史の中で良く理解出来ない時代「応仁の乱」京の街、そして神社仏閣を焦土にして一世紀以上続く戦国時代のきっかけになった「応仁の乱」室町幕府の守護による支配も破綻していく過程に足利義政がいる。もともと室町幕府は諸侯の連合体として成立していた。そんな中、地方の国人豪族などが守護、守護代の支配を無視し始める。将軍を継いだ義政も当初は守護を中心とした政権を見出していろいろと画策するが、うまくいかない。そこで嫌気がさして弟足利義視に将軍職を譲り、隠居すると言い出したところから物語がはじまる。この時代の特徴的な4人の物語として書かれている。足利義視、日野富子、細川勝元、足利義政の4人である。この4人は応仁の乱の当事者達である。将軍後継者問題、守護の後継者問題(畠山、富樫、山名、細川)が複雑に絡み合って都は焦土と化す。

足軽という仕組みが出てきて戦は人を雇って行うようになってきた。雇われる足軽は主人のことより、お金の多い方になびく。したがって細川勝元、山名宗全が東陣、西陣に別れてはじめた応仁の乱も両陣が勝ったり負けたり、そして足軽は東にいったり、西に行ったり、敵味方の構成が刻々と変わって11年も戦乱の世が続いた。その間義政は政治にはまったく無頓着で道楽(能、庭、お茶、生け花、銀閣寺)ばかりにうつつを抜かす。妻の日野富子は実子義尚を将軍にさせようと暗躍する。足利義視側、義尚側にそれぞれ守護大名がつく。利権、金の権化となった有力者達が、知力、武力、婚姻、泣き落とし、恫喝、絡み手で抗争を続ける。なぜ政治は混迷したのか? 昨日の味方は今日の敵。朝令暮改は当たり前。「応仁の乱」の真相を、将軍の妻で当時の政局を操ったとされる日野富子ら複数の視点で描いている。

日本の原風景はこの義政の時代に芽が出てきている。また後の信長、秀吉の時代の下克上が最初に現れた時代。既存の秩序を徹底的に破壊したそんな時代。その芽が家康の治世に花開いたのでは?暗君と言われている義政は実は先の先を読んでいたのではないか?戦さ戦さに明け暮れる中、全くそちらには目を向けずにひたすら自分の道楽を追求する。この義政時代に出てきたものが、江戸時代磨かれ、今の日本人の中に染みこんだ生き方に通じるのでは?日野富子と義政の中はここでは意外と相互で理解し合っていたとされている。日野富子は藤原氏の日野家の出身、日野家は元々経済に明るく蓄財の才のあった。富子も蓄財の名人、応仁の乱を治めたのは富子の富。京に出てきた守護大名の帰陣の費用を出した。
この本を読んでみた室町時代も面白いと感じた。また出てくる人々に人間味があって面白い。