投稿者 スレッド: チェルノブイリの森 事故後20年の自然誌  (参照数 385 回)

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チェルノブイリの森 事故後20年の自然誌
« 投稿日:: 10月 04, 2013, 06:25:58 pm »
書名:チェルノブイリの森 事故後20年の自然誌
著者:メアリー:マイシオ
訳者」中尾ゆかり
発行所:NHK出版
発行年月日:2007/2/25
ページ:381頁
定価:2200円+税

チェルノブイリ原発事故が起きたのは1986年4月。事故後1989年よりキエフを基点に現場取材を開始した。著者はウクライナ系アメリカ人ジャーナリスト。
事故発生当初地上には草木も動物もいなくなってしまった荒廃した土地が広がると言われた。また放射能に汚染されて巨大化したゴキブリやネズミが、荒廃した土地をはいずり回るとも。でも実際は人体には危険きまわりない周辺地域は、動物が棲息する森に大きく変わっていた。

しかもその土地は今なお汚染地帯まっただ中。著者が汚染におびえつつたち入り禁止区域に入り取材を重ねたルポルタージュです。汚染地域の住民、健康、事故の模様、原因などについての本は数多く出版されているが、自然についての本は数少ない。その一冊です。もともと科学者でもないので状況証拠的で、情緒的な表現が多くて科学書のような厳密さ、論理展開はないが、自然の強さ、不思議さを感じる本です。

最後の方にチェリノブイリ原発の石棺、そして新シェルター案などについて管理者にインタビューしているが、現状の石棺はもうぼろぼろ、新しいかまぼこ形のシェルターを作って覆う。100年位は持つ、でもその後はまた別の方法を考え実行しないといけないと。これが1万年に渡ると。すると今の言語で警告を発していても1万年後に伝える方法は?また世界中にある原発が炉心溶融を起こす確率は30年に1回、といわれているが、これからも第二のチェルノブイリが起こる。そしてまた同じ問題に直面させられる。しかし自然、動植物にとってはいびつな人間によって作り出された不自然な自然によって人間のいない楽園の出現になるという皮肉な結果になってくる。

ちょっと興味をもったのは被曝の多いところ松は変異して、枝が幹に巻き付くように生えてくる。また植物によっては放射能をよく吸収する植物とほとんど吸収しないものがある。また古代からいたゴキブリは実は放射能には弱いようだ。ほとんど見かけることがなかったと。このあたりはやっぱり科学者がじっくり研究して欲しい感じがする。あくまで著者は自分の足を使った取材で手にした情報を披露しているだけ。

本書より
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奇妙に思えるが、チョルノブイリは人間の住むどこの町よりも空気が新鮮だ。車の数はたいてい片手で数えられるし、聞こえてくる音といえばせいぜい鳥のさえずりくらい。これはチェルノブイリ事故の逆説のひとつだが、強制避難が行われて、産業化、森林破壊、農耕、人口流入に終止符が打たれ、ゾーンは環境としてはウクライナでも指折りの清潔な地域になったのだ――放射能を除けば。