怪しい無法国家の大阪・関西万博強行 開催する意味もなければ力もなし|日刊ゲンダイDIGITAL
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/327393建設の大幅な遅れで、「再来年4月の開幕に間に合うのか」と懸念されている2025大阪・関西万博。これまで大阪の局地的な問題と見られて世間の関心も薄かったが、あまりにお粗末な現状が話題を呼ぶという皮肉な展開になってきた。
中でも注目を集めたのが、パビリオンの問題だ。万博と聞いてわれわれが真っ先に思い浮かべるのが、「スイス館」「フランス館」など、参加国が設計から建設まで自前で行う「タイプA」の海外パビリオンだ。各国がデザインに趣向を凝らし、建物自体が展示物になる「万博の華」である。中国やオランダなど約50の国・地域による出展が見込まれているというが、つい最近まで建築申請が「ゼロ」だったことが明らかになった。
7月になってこの惨状がメディアで報道されると、慌てた大阪市は7月28日、「タイプAの申請が韓国からあった」と発表。本来の計画では、すでに工事を始めていなければ間に合わないのに、7月末時点で基本計画書を提出したのは2030年に釜山万博を誘致しようとしている韓国だけなのだ。
「海外パビリオンの建設が進まないのは、参加国側の問題というより、日本の国内事情が大きい。建設資材の高騰と人手不足で採算が合わないため、ゼネコンはどこも受注したがらないのです。そもそも、4月に退任した松井前大阪市長が懇意にしていた安倍元首相や菅前首相の協力を得て、日本維新の会の肝いりとして実現にこぎ着けた万博ですから、それを引き継いだだけの岸田首相はあまり関心を示してこなかったことも工事の遅れに影響しているでしょう。今ごろになって、慌てて経産省の多田明弘前事務次官や平井裕秀前経産審議官という事務方ツートップ経験者を万博協会に送り込んでテコ入れしようとしていますが、時すでに遅しの様相です」(ジャーナリスト・森功氏)
岸田首相は4日、西村経産相や岡田万博相らに対し、パビリオンの早期建設に向けた環境整備の加速に政府を挙げてあたるよう指示したが、今から突貫工事したところで、間に合わせるのは物理的に難しい。そこで浮上しているのが、怪しげな超法規的措置の数々だ。
建設業界は来年4月から、原則として月45時間、年360時間を超える時間外労働はできなくなる。来年4月といえば万博関連工事の真っただ中だ。そうしたら万博協会はなんと、万博の工事従事者は残業規制から除外するよう政府に要望した。適用が除外される例としては災害復旧などがあるが、万博は災害か。さすがに厚労省は「業務の繁忙という理由では認められない」と否定的だが、経産省は適用除外を後押ししている。
まるで日本のひとり芝居、これでは日本単博あるいは大阪独博
もはや「万博」と呼べるのか疑問(C)日刊ゲンダイ
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さらに経産省は、国内建設業者向けの「万博貿易保険」も創設。発注元の参加国側から工費が支払われない場合に9割から全額が補償されるという。取りっぱぐれリスクを減らして建設会社の受注を促進する狙いだが、この保険は政府が全額出資する日本貿易保険が運用する。原資は税金だ。
万博の会場建設費は大阪府と市、経済界が3分の1ずつ負担することになっているが、すでに当初予算の1250億円から1850億円に上振れしている。開幕に間に合わせるために無理をすれば、資材も人件費もますます暴騰し、多額の税金がつぎ込まれることになりかねない。
「維新お得意の『身を切る改革』と言うのなら、万博を中止する勇気も必要ではないか。自分たちの計画の遅れを政府のせいにして、尻ぬぐいは税金丸抱えなんて世論が許さないでしょう。工期圧縮のために海外パビリオンをプレハブの建て売りにするという案も出ていますが、プレハブが並ぶ万博なんて、日本の国力衰退を世界に知らしめる結果にならないでしょうか」(政治ジャーナリスト・角谷浩一氏)
会場の夢洲は埋め立て地で地盤が緩いため、パビリオン建設は耐震基準を厳しく設けることになっていたが、これがプレハブとなると耐震基準もウヤムヤに緩和していくのだろう。
2025大阪万博のテーマは「いのち輝く未来社会のデザイン」。150カ国の英知が結集し、未来社会を実現。負の遺産だった「夢洲」を大阪ベイエリアの成長拠点へ──。こう謳われていた。
「当初は万博の跡地と建物を有効活用して、万博成功をレガシーとして次世代につないでいくという振れ込みだったため、耐震基準も厳しくなる予定だった。一時的なプレハブなら耐久性も関係ないし、当初の構想はすでに破綻していて、儲かるのはプレハブ業者だけになりそうです。菅前首相を補佐官として支え、現在は大阪府市の特別顧問でもある国交省OBの和泉洋人氏が顧問を務めている住宅メーカーグループがプレハブ事業を請け負うのではないかと業界内では言われています」(森功氏=前出)
パビリオンは日本が建て、チケット前売り券も大半を万博協会、地元の自治体、関西財界で引き受ける。こうなるともう「万博」と呼べるのかも疑問だ。日本単博、あるいは大阪独博。日本のひとり芝居みたいな万博を無理して開催する意味がどれほどあるのだろうか。
国民の不安と反対を押し切って、コロナ禍に無観客で開催した東京2020五輪も、あれよあれよで予算規模が膨れ上がり、終わってみれば逮捕者続出の汚職と談合の祭典だった。大阪万博のためなら労働基準法も無視とばかりに国を挙げて突き進む背景にも怪しい利権が絡んでいるのだろう。
質素なプレハブが並ぶ裏では巨額のカネが動き、一部の利権屋が潤う構図。こんなバカげたイベントはもうやめた方がいい。