書名:柳沢騒動
著者:海音寺 潮五郎
発行所:旺文社
発行年月日:1986/5/15
ページ:370頁
定価:500円
柳沢騒動とは、「柳沢吉保は、その妻を将軍綱吉の枕席に待せしめたところ、吉保夫人は妊娠して吉里を生んだ。吉保は、吉里をして徳川の大統を継がしめんとして、綱吉を籠絡し、事成らんとした時、綱吉夫人鷹司氏が一身を挺して綱吉を閨中に刺し、徳川家の社稷を救い、自らは自殺した。」という俗説が広く一般に信じられていた。
その俗説にあえて異を唱えた作品です。徳川幕府が安定して反映していた元禄時代、その元禄時代にようやく武士の生き方。儒教を元に武士道は完成した。その武士道に生きる側用人牧野成貞、綱吉の枕席に侍ったのは妻のあぐり、また娘。元禄時代を舞台に将軍綱吉、綱吉を快く思っていない水戸の光圀の奇矯な行動、時代は太平洋戦争前の昭和の世相を背景にこの物語は生まれた。
サンデー毎日に連載されたが、途中で掲載中止、当局の意図があったとかなかったとか?その後自ら参加する「文学建設」に掲載された。綱吉と光圀の対立構図が詳しく描かれている。歴史の見方を教えてくれる。ちなみに何々史観という史観ということは海音寺潮五郎の造語だとか。司馬遼太郎が好んで使っていたように思う。