書名:エンデの遺言
著者:河邑厚徳
出版社:NHK出版
発行年月日:2000-3-25
価格:1500円+税
ページ:P262
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世界を覆う金融システムとその上に乗って自己増殖しながら疾駆する「貨
幣」は、人間労働の成果と自然を含む価値の高い資源を、貧しい国から富
める国へと移す道具になっている。本来の役割を変えた貨幣は「利が利を
生むことを持って至上とするマネーとなった。この変質する貨幣の全体が
「エンデの遺言」に凝縮されている。エンデは予言している。
「今日のシステムの犠牲者は、第三世界の人々と自然にほかなりません。
このシステムが自ら機能するために、今後のそれらの人々と自然は容赦な
く搾取され続けるでしょう」
本書 プロローグ 内橋克人 より
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ミヒャエル・エンデ、問題の根源はお金にある。NHKで放送された「エ
ンデの遺言」の番組制作時取材で集めた情報をまとめた本である。
普通の常識では経済は成長する年3%程度の成長は必要。お金には利子
がつく、全てプラスに指数関数的に増加していく。例え3%の成長であっ
ても20年50年の後には天文学的な数字になっていく。
年間貨幣取引高は300兆ドルと言われている。地球上に存在する国々の国
内総生産(GDP)の総額は30兆ドル、同じく世界の輸出入高は8兆ドル、
実際の経済に必要なお金の約10倍のお金が、世界に出回っていることにな
る。この部分が、金融システムの中でお金がお金を稼ぐというように回っ
ている。したがって実際の経済に回るお金より、この金融システムで投資
、投機、賭博的な動きによって世界の景気が決まってしまう。強者はます
ます強くなり、弱者はますます弱くなるそんなシステムになっている。
エンデの言わんとするところは、お金とは何か?きっちりした定義が出
来ていない。またお金は持てば持つほど価値が下がる。という考え方、貯
蓄をして無限の期間保有しても価値が上がるのではなく、逆に持てば持つ
ほど価値が下がってくるものとして、いかに早く期限切れにならないうち
に使ってしまう。そうすることによって回転する回数が多くなる。これに
よって景気は悪くならない。不況になればなるほど、私蔵するする人が増
えて市中にお金が回らなくなる、お金の流通が阻害される。心筋梗塞と一
緒でどこかで血管が破裂するということを今までの経済は繰り返してきた。
いま価値の下がるお金という考え方が、地域貨幣、地域通貨とよばれる
運動によって少しずつ広まっている。地域通貨を考える上でこの本はバイ
ブルになる本だと思う。
たった262ページの本ではあるけれど読むのに苦労した。行きつ戻り
つの繰り返しで時間が掛かってしまった。また今までの経済学の常識とは
全く逆の思想、なかなか取っつきにくいところがある。何回か読み返して
みないと理解できないところがあると思う。
とは言え、目から鱗が落ちる考え方だと思う。
ところでこの本と同じNHK出版から出ている本ですが、「ソフィーの世
界」が以前ベストセラーとして一斉を風靡したことがありますが、最初大
手出版社に「ソフィーの世界」の出版の話が会ったとき、全く売れない、
売れるわけはないということで断られて、NHK出版に持ち込まれたとの
こと。中身の善し悪しは別としてベストセラーになっている。
「エンデの遺言」こんな本もやっぱり他の出版社ではやっぱり出版
されなかったのではないかと思う。