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室町無頼
« 投稿日:: 8月 06, 2019, 08:39:42 pm »
書名:室町無頼
著者:垣根 涼介
発行所:新潮社
発行年月日:2016/8/20
ページ:530頁
定価:1700円+税

応仁の乱の10年ほど前の世の中を舞台に、時代の流れとともに既存の秩序が崩
れつつ或る都の無頼たちが立ち上がる。骨皮道賢(ほねかわどうけん)と蓮田
兵衛(はすだひょうえ)という実在の人物が主人公。そしてこの人物達を繋ぐ
若者・才蔵がもう一人の主人公。骨皮道賢(ほねかわどうけん)は幕府から洛
中の治安維持を任されていて、伏見稲荷神社を縄張りに活動している。その裏
で土倉(金蔵)や関所を襲撃したりする極道の頭目だったり。蓮田兵衛(はす
だひょうえ)牢人と洛外の村落をまとめて、一揆を起こそうとしている。足利
の室町時代はあまり資料も残っていないので、よくわからないが、山城一揆と
か一揆というのはどういうものかもよく理解できないところがある。この物語
は百姓と支配者層のやり取りだけでない。また百姓は土地を持っている。支配
者は税を取る権利を持っている。飢饉になれば百姓は土地を耕すのを放棄して
逃げ出しても仕方ない。税を取る方も困ってしまう。その間にたって蓮田兵衛
は交渉ごとをまとめていく。でも飢饉が毎年続くとそうも行っていられない。
向田神社、相国寺(この当時七重塔高さ90mがあった)、東寺を一揆の拠点と
して使う。この一揆は農民、浪人など武士と呼べない人々が烏合の衆のように
集められる。それをマネージメントして戦略として活用した蓮田兵衛、才蔵
主役なき人々の息吹が感じられる作品です。この辺りの戦いから足軽(農家の
次男、三男でもいい)の活用法が出てきた。よくわからない室町時代の風景が
見えてくるような感じがします。少なくとも今のように役に立たない人間はい
らないではなく、その存在だけで許容される仲間たち、暮らしがある。この作
品には作者の優しさがあふれています。何でも時代小説は2作目とか?長編で
すが一気に読んでしまいました。足利幕府は江戸幕府と違って支配して税金が
取れるところが畿内だけぐらいで意外と質素な政権。それでも金閣、銀閣など
日本文化の原点になるような道楽に使うお金はあったようですね。その代わり
無頼の徒も一杯いたこと、そして幕府がしっかりしていないので自分たちでや
るしかないと立ち上がった骨皮道賢と蓮田兵衛が活躍出来たのでしょう。

今年度ベスト必至作「室町無頼」 既成の歴史観をくつがえす
https://www.bookbang.jp/review/article/518778
垣根涼介・インタビュー 無頼でなければ、この世は変えられない『室町無頼
』刊行記念
https://www.bookbang.jp/review/article/516946
まぼろしの相国寺七重塔を復元する
https://www.kyoto-arc.or.jp/news/leaflet/336.pdf