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チェルノブイリの祈り 未来の物語
« 投稿日:: 9月 25, 2016, 10:28:09 pm »
書名:チェルノブイリの祈り 未来の物語
著者:スベトラーナ・アレクシエービッチ
訳者:松本 妙子
発行所:岩波書店
発行年月日:1998/12/18
ページ:246頁
定価:2000円+税

チェルノブイリ原子力発電所4号炉で起きた原子力事故は1986年4月26日に起きた。それから10年ほど経って当時のチェルノブイリ周辺に住んでいた人、直接原子力事故に向かった消防士の妻、事故収拾にあたったアフガン帰還兵の人々など100名以上の人々のインタービューで綴った本です。放射能の知識が殆ど無い人々は勇敢(いや知らず)に消火に向かった。そして14日後にはなくなっている。

仲間も消防士は全員。その妻が語っている。地元の病院では手当のしようがなくて、モスクワに黙って送られてしまった夫を追いかけて、モスクワに、そして病院の夫に会うために色々な障害を越えて会う。淡々と語られているが、経験したことがない事ばかりで頭脳は停止状態、どうすべきか判らない。戦争なら体験があるし、対応のしようもあるが、原発事故は何も見えない、匂わない。線量計もない。政府は大丈夫、正常値だと。

この中に出てくる話はその当時原発事故にあった人々の生の声ばかりなので、統制した情報があった訳ではないし、また情報公開もされていないことも多いので、噂ばなしも一杯入っている。事故後死んだ人は3万6千人、避難を強制されても残っていた場所は59キューリー、179キューリー(1キュリーは厳密に3.7×1010ベクレル(37ギガベクレル、370億ベクレル))など。グレイなどの単位も実際ベクレル、シーベルなどに換算してみるととんでもない数字も出てくる。これは事故の調査報告書ではないので、厳密な数字は求められないが、その人々の間では信じられていたこと。またどこからか聞こえてくる話として人々の認識として残っていたものでしょう。

逆に論理的、定量的ではなく、感情的、定性的な話の中に人々の思いが良く表れている。10年以上たってもまだまだ収束していないチェルノブイリ、30年後の現在でもまだまだホットスポットは150km離れていてもあり、そこに住む人もいるとか?老人達が、でもその老人たちが死んだらその村はなくなってしまう。原発が原因と確定ないけれど、いろいろな疾病の発生率が高くなっている。それは収まっていない。子供の甲状腺癌はなくなったが、40歳50歳代の人に甲状腺癌が出ているとのこと。これからも疫学的調査を継続していかないと因果関係が判らない。そして判ったときは患者は死亡している事になってしまう。心配性でも万が一を考えて置くことが大切。人の一生より長い半減期(これは半分になるだけ)30年、殆ど問題なくなる迄はそれの10倍以上300年以上になってしまいます。何ともやっかいな原子力事故(放射能)です。
この本の中にある話も途中経過でこれからどうなっていくのか。歴史的時間が必要だと思います。

チェルノブイリ原発事故による放射能汚染と被災者たち
http://www.rri.kyoto-u.ac.jp/NSRG/Chernobyl/GN/GN9205.html