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彦九郎 山河
« 投稿日:: 3月 01, 2013, 06:46:07 pm »
書名:彦九郎 山河
著者:吉村 昭
発行所:文藝春秋社
発行年月日:1995/9/30
ページ:333頁
定価:1600円+ 税

寛政の三奇人、林子平、蒲生君平、高山彦九郎と呼ばれている。奇人とは類い希
なするれた人という敬称です。高山彦九郎は松平定信、上杉鷹山などの活躍する
江戸後期の人。細井平洲を師として、勤王の志を持ち、幕府は朝廷から政権を預
かっているに過ぎないという思想を前野良沢・大槻玄沢・林子平・藤田幽谷・上
杉鷹山・広瀬淡窓・蒲池崑山など多くの全国各藩の人々と交友しながら、広めて
いく。

当初、蝦夷地へ渡ろうとするが果たせず、天明の飢饉に陥った東北地方を遊歴し
て、南部藩、秋田藩、陸奥藩などは何万人もの餓死者が出た、鷹山の米沢藩は餓
死者が一人も出ていない。これらを政治によって対応出来ることを行わなかった
南部、秋田、陸奥は人災と言いきる。その後京都に上り岩倉具選宅に寄留し、奇
瑞の亀を献上したことにより光格天皇にも拝謁した。ますます尊皇の志を持つ。
そして天皇を支援してくれる藩として薩摩藩に狙いを定め、単独で薩摩に潜入す
る。薩摩藩内でも同じ志を持つ同士も多く出来たが、最終的には幕府には逆らえ
ないということで、この企ては失敗する。その後、兇状持ち(幕府から狙われる
)となって九州を転々とするが、久留米で自刃する。

明治維新の勤王の志士達の原形を作った高山彦九郎。彼の思想、狙いが薩摩、長
州、土、肥によって大政奉還、明治維新がなった。この彦九郎は学者ではあるが
、実践の人、また交友関係も多い。全国至る所に彼を快く迎えてくれる人々がい
た。机上の学問とは違った人。戦前の皇国史観であまりにも持ち上げすぎた感が
あって実体を伝えられていない。この吉村昭は冷静に真実を追っている姿が感じ
られる。