書名:人間だけでは生きられない
Never live without all creatures on the earth
「科学者として東京オリンピックに反対します」
著者:池内 了
発行所:興山舎
発行年月日:2014/12/8
ページ:315頁
定価:2300円+税
月刊「寺門興隆」「月刊住職」に掲載された文章をまとめ整理した本です。宇宙物理学者の最新科学説法集。僧侶向けに科学者の感じたこと、本質的なことを易しい言葉で綴っています。勿論一般の人にも判りやすい内容です。
目からウロコの誰もが驚く厳選70話(一部)
●年をとると一日が速く過ぎるわけ
●人はなぜミミズを踏みつぶせないのか
●神はなぜ左利きなのか
●蚊はなぜ人を刺せるのか
●バナナに迫っている危機
●日本は農業に向いていない
●宇宙をゴミの山にするな
●ガンはプラセボ効果では治せない
●ミネラルウォーターの値段はなぜ法外か
●いまも続く人体実験を問う
●自然災害は天災か人災か
●アリの七割は怠け者です
●生涯の脈拍はみんな十五億回
●世界は五人でつながっている
●ウシのゲップにはわけがある
●僧侶が説く地球平坦説の再評価
●ハサミムシの母親の壮絶な姿
●脳トレにとらわれるな
●地球温暖化は欧米を寒くする
●「みんなが言っているから」という嘘
●人間はどこから来たのか
●コップ一杯の水の中にあるもの
●鶏より卵が先
●ヒトはなぜ色を見分けられるか
●すべての原発が停止した今こそ
●占いはなぜはやるのか
●地球悪循環は加速している
●電気料金に隠された原発推進費
●放射線被曝限度量は誰が決めるのか
●未来に責任だけを負わせるな
●本当は十年に一度の原発大事故率
●リニア中央新幹線に異論あり
●東京オリンピックに反対します…
人間はどこから来たのか
180億年前のビッグバンから宇宙が始まったと言われている。そのとき、私たちの身体を形作っている炭素や酸素や窒素、~リンなども、星によって作られたものです。元素のレベルで見れば、私たちは星であったのです。太陽系の崩壊、銀河の崩壊と元素レベルまで空間に散らばっていく。宇宙的規模で輪廻転生している。曼荼羅の世界、華厳の世界。
1人の人が死ぬと身体は煙と共にガス状の原子となって空間に散らばって、その原子は雨に打たれ川に流れて海に広がっていく、そこの海水をコップ1杯とってくると元の一人の人の原子が1000個も入っている。私たちのご先祖と原子の連鎖で繋がっている。
科学者の視点から現代の風潮を鋭い目で見つめている。科学者の前に人間という著者です。科学万能をうたって浮かれているのは本当の科学者ではない。科学で判っていることはほんの少しということをハッキリと言える科学者が著者ではないでしょうか?御用学者とは全く違った新鮮な視点を提供してくれます。
本書より
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大量生産・大量消費・大量廃棄
人類はいずれ地上資源文明(地下資源に対して)に移ることになるでしょう。そのとき初めてゆっくり流れる時間を回復することになるに違いありません。そして知的に豊かな人生を生きるようになると思います。
自然災害は天災か人災か
「文明が進化するほど自然災害は大きくなる」と言ったのは寺田寅彦です。
自然を征服したつもりになっている人類は、やがて自然から強いしっぺ返しを受けるかもしれません。ほどほどを知って、自然と共生することを学ばねばならないと思っています。
宇宙をゴミの山にするな
今、国際宇宙ステーションが世間の注目を惹いています。2022年で終わることが予定されていますが、その後の始末については現状では何も考えられていません。長さ75メートル、幅110メートル総重量が450トンにもなって、サッカー場ほどもある巨大なステーションが、そのまま廃棄物になって宇宙を漂い続けることになるのです。
私は、宇宙のゴミをますます増やすことになりかねない宇宙ステーション計画には賛成していません。でも、そんな意見は新聞に載ることはなさそうです。世論が大賛成していることへの反対意見をマスコミは取り上げないためです。
蚊はなぜ人を刺せるのか
蚊はあんな小さな体なのに数々のセンサーを持っており、それが効率よく働いて血を吸う機能を果たしていることがわかると思います。もし、それらを人間の手で作るとすれば、巨大な装置になってしまうでしょう。
むろん、蚊だけではありません。人間は地上の王のように威張っていますが、蚊やハエや甲虫が持つの力には欠けています。まだまだ彼らに学ぶべきことは多いようです。
生き物になぜ雄と雌があるか
アメーバやバクテリアのような原生生物は、身体が分裂して子孫を作っています。単に母体が分裂していくだけですから、その命はずっと続いていくことになり、死はないと言えるでしょう。原生生物は永遠の命を生きているのです。
生物が雄と雌に分化したことによって死が必然化したのですが、それによって限りある命を慈しむようになったとも言えるでしょう。
心構えで世界が変わるわけ
パスツールが「偶然の幸運はそれを待つ人間の心構え次第」と言ったように、「偶然」の幸運は漠然と待っていれば来るものではなく、「必然」に変えようと待ち構えている人間に訪れると言うことです。
「不幸」を「幸福」に転化するのも人間の心構え次第なのですね。
世界は五人でつながっている
親父の友人の子どもが通う学校の先生のお母さんが(これでもう五人がつながっています)、挨拶もしないで通り過ぎる道の女性であるというわけです。
もしも、このようなつながりが目に見えるなら、むしろ人は豊かな人間関係の中で来ていることが実感できるのではないでしょうか。それを知らないために、殺伐たる社会になっているのかもしれません。
地球悪循環は加速している
地球環境問題の恐ろしさは、人びとがこれらの「悪循環」が起こることを知っており、その危険性も充分承知していながら、目に見える現象はゆっくりと進むので重大事と考えないところにあります。
しかし「悪循環」は加速してゆくことが知られています。今は緩慢な変化ですが、そのサイクルを繰り返すごとに速く循環するようになり、最後には手がつけられなくなって破局が来るのです。
まだ「悪循環」がゆっくりしている今こそ、「不安定」の芽を摘んでおかねば大変なことになります。地球環境問題は現在が正念場なのです。
東京オリンピックに反対します
マスコミはこぞって東京オリンピックに賛成で、もはやその是非を論じるものは誰もおらず、あたかもすべての人間が歓迎しているかのようです。経済が活性化する、若者に夢を与える、国民が一体となれる、世界の一流アスリートを見ることができるなど、いくつもの理由が挙げられています。
東京オリンピックに反対の者や異論がある人は「非国民」扱いされる有様で、それらの人は多勢に無勢で黙るしかないわけです。
私も東京オリンピックを支持しない人間の一人で、いくつかの理由があります。
第一は安倍首相が「汚染水は完全にブロックされている」…「健康問題については全く問題ないと約束する」と宣言したように、嘘と空手形で真実を覆い隠したことです。
二つ目の理由は、公共事業を拡大してますます国の借金が増えていく危惧が大きくなったことです。今必要なのは借金を減らす経済政策であり、オリンピックの誘致は真逆の施策と言わざるを得ないのです。
「オリンピックの成功」を口実としてテロ対策のための警備強化を図り、国家の治安強化に乗り出し、安全保障のためとして国防軍を設置し、憲法の改悪を狙って「戦争のできる国」にする、安倍首相がそのような方向に日本を引っ張っていこうとしていると考えるのは深読みでしょうか。
三つ目の理由は、確実に東京を襲う関東地震がいつ起こっても不思議ではないこと。
オリンピックにお金を使うより天災に強い国づくりにとうしすべきでしょう。
マイナスの要素ばかりを考える悲観論者と言われそうですが、そのような人間がいることで先行きへの警戒心が少しは養えるというものではないでしょうか。
私が一番恐れていることは、それらにかなり大きな投資をした挙げ句、“関東大地震”が起こってすべてパーとなってしまうことです。そうなれば、日本は破産しかねないでしょう。