書名:西行 月に恋する
著者:三田 誠広
発行所:河出書房新社
発行年月日:2008/7/30
ページ:286頁
定価:1700 円+ 税
西行は和歌で有名ですが、この作品は父方の先祖は伝説の英雄藤原秀郷(俵藤太
)で、母方の今様の名人という設定。流鏑馬の達人、蹴鞠もこなした。文武両道
に秀でた佐藤義清(出家して西行)の青春期に焦点を当て、待賢門院璋子との恋
物語を描いた作品。平安末期の貴族の時代から武士の時代への変わる時、西行は
歴史の証人的立場で描かれている。
白河天皇、上皇、鳥羽天皇、上皇、院政が始まった時代。摂関政治の崩壊の時期
をじっくりと見ている西行として描いている。保元、平治の乱がはじまるところ
まで、それ以降平清盛、源義朝、頼朝の時代に繋がる激動前夜の様子、実は皇位
継承に絡む人々のそれぞれの思惑、そして恋が歴史を変えていく流れに面白さを
感じる。西行の違った一面が強調されている。
三田誠広は初めて読んだけれど読み応えのある作品です。月というのは手に届か
ない、遠くにあるあこがれの人をあらわしています。