投稿者 スレッド: 伯爵夫人の肖像 杉本苑子全集  (参照数 596 回)

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伯爵夫人の肖像 杉本苑子全集
« 投稿日:: 3月 01, 2013, 04:17:11 pm »
書名:伯爵夫人の肖像 杉本苑子全集12 
著者:杉本苑子
発行所:中央公論社
発行年月日:1998/2/7
定価:3600円+税

大正時代の自由主義恋愛事件のひとつ千葉心中事件を題材に「芳村多満子」とい
う主人公の物語。大正6年3月7日、千葉駅で若い女が列車に飛び込んだ。同行
の男は女が死んだと思い、土手によりかかり短刀で喉を突いて死んだ。男は倉持
陸助といい、芳村顕正伯爵のお抱え運転手、女は芳村顕正の娘で曾袮寛治の婦人
の芳村多満子であった。
 この事件を一番最初にスクープとして発表した東京朝日の記者、編集者など芳
村多満子とその家族以外は全て本名で書いている。朝日新聞に在席した漱石、正
宗白鳥など著名な作家も出てきて大正ロマンの一部を彷彿させる。実際にあった
事件を克明に描いている。
 この時代、新聞はしばしば恋愛事件を報じた。大杉栄・神近市子の日蔭の茶屋
事件(大正6年)、芳川伯爵若夫人の千葉心中事件(大正6年)、白蓮事件(大
正10年)など、世間の好奇心をくすぐるような形でそれらの事件は報道された。
それは恋愛問題や結婚問題について、婦人が独立の地位を要求し、男性の所有物
から抜け出そうとする苦闘だったといえよう。そして「自由主義恋愛」という言
葉がどこからともなくこの時代に生まれたようだ。
「芳村多満子」というのは芳川鎌子のこと。

長谷川時雨 芳川鎌子
http://www.aozora.gr.jp/cards/000726/files/45987_26595.html