書名:ルカの方舟
著者:伊与原 新
発行所:講談社
発行年月日:2013/6/6
ページ:309頁
定価:1400円+税
南米パタゴニアの氷原で発見された隕石、それは火星からの隕石でその中に生命の痕跡が発見された。
科学雑誌「ネイチャー」論文が掲載された。そんなおり、科学誌ライターの小日向に一通の不審なメールが届く。そこには火星隕石に関する論文に偽造を暗示する告発メールだった。最近どこかであった事件と似たような話。でもこの作品の方がちょっと先に出版されている。純粋の科学者が書いた科学ミステリー。
最近の科学研究の動向などを踏まえながら、博士課程を終えても就職口も、助教への道も閉ざされている科学者達の唯一の目標は論文の数をこないして、何件科学雑誌に発表したかが問われる。そして科学雑誌も「ネイチャー」のような超有名誌ではなく、全く名も無い誰にも読まれない科学雑誌が多数出現している。論文の掲載はお金を払って掲載して貰う。それで読まれなくても科学雑誌は経営していける。
科学の世界は一人の天才がいれば、後の科学者は不要というところがある。科学者の増産が良い研究・発見が増えるわけでもない。このミステリーは論文偽造の謎を追うストーリーです。
火星の隕石を分析すると35億年前のもの、そこに生命の誕生の証跡があった。地球の生命の誕生の時期は35億年前という。そこから地球の生命の起源が、火星を飛び出した隕石に載った生命(方舟)が、地球にやってきたのではないか?そんな浪漫あふれる話もあり、なかなか面白い。ただちょっと難しい描き方で理解しづらいところもある。