「人の死は、いつ来るか、わからぬ」
「武士たるものの心得でございますか?」
「いや、人たるものの心得よ。」
「はあ・・・・・」
「人は生まれたるその日より、日一日と死に向かって進み始める。
これほどはっきりしたものはない。現におぬしも今日は死にかけた」」
・・
「人たるものは、いつも死を明日にひかえ、このことを覚悟して今日を生くる。
なればこそ、風呂の味も身にしむるし、女の可愛さもひとしおとなり、酒のうま
さも格別のものとなる。あは、はは」
・・・
「風呂と酒と女・・・・・」
堀部安兵衛・・・完本池波正太郎2