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オオカミの護符
« 投稿日:: 10月 14, 2015, 12:26:06 am »
書名:オオカミの護符
著者:小倉 恵美子
発行所:新潮社
発行年月日:2011/12/15
ページ:204頁
定価:1500円+税

川崎市宮前区土橋(旧武蔵国橘樹郡土橋村)は昭和40年頃から段々だと東京が進出してきて50戸から7000戸の人々が住む街へと大変貌を遂げた。長年農業を営んでいた著者の実家、東京勤めを経て実家の土蔵に貼り付けられた「オオカミの護符」を見て抱いた素朴な疑問、「これはなに?」オオカミの護符の興味からその謎を解く旅となった。

新編武蔵風土記稿橘樹郡土橋村(1820年頃)によると土橋村は旗本戸田氏と長坂氏の相給地(一つの村が複数の旗本・寺領の支配下になっている。関東地方では多い支配形態です。)(寬文9年1669年長坂血鎗九郎、万治3年1660年戸田六郎右衛門)39戸の世帯とある。したがって昭和40年頃まであまり変わらない村だったのでしょう。 

「オオカミの護符」を地元では「オイヌ様」と呼ぶ、奥多摩の御岳山の御岳神社の御岳講が正体。地元の御岳講を知っている人を探しながら追いかけながら、御岳の御師、関東甲信の山岳信仰を追いながら秩父の山、神社を巡る旅。正史の世界には取り上げられてこなかった身近な民俗風習の中に太古の昔から続く、人々の生きてきた道が見えてくる。なかなかの力作です。

この中で「新しい物、情報は山からやって来た。」というのはちょっと発想の転換、昔はの道は平野より、尾根筋を辿る道が開かれていた。とくに関東平野のような湿地帯はあることができない。したがって山々を巡る山伏、能役者などの人々が都から物、情報を伝えてきた。今は都会と変わらなくなってしまった川崎の小さな村にも昔の面影が色濃く残っている。そんな村を知るために著者は動いた。興味が一杯の本です。

『オオカミの護符』 小倉美惠子さん、足立真穂さん――オイヌさまに導かれ
http://www.mishimaga.com/hon-kobore/020.html