書名:美食探偵
著者:火坂 雅志
発行所:講談社
発行年月日:2000/3/20
ページ:306頁
定価:1900円+税
明治三十年代の湘南(大磯)を舞台に、『食道楽』の作者として知られる美食家であり小説家でもある村井弦斎を探偵役として、山田文彦という医学助手をワトソン役、名探偵シャーロック・ホームズばりの構成です。この中にも多嘉子も脇役(独身)で、登場する。実際の村井弦斎の夫人多嘉子は、父が大隈重信の従兄弟で、後藤象二郎夫人、三菱の岩崎弥太郎も親戚筋にいる、明治のエリート一族でした。
舞台になる大磯には政府高官、総理大臣、政治家、実業家の別荘が並んでいます。そんな中で起こる殺人事件を村井弦斎が解決していくという5つの短編からなっています。
文明開化の花開く洋風のカツレツ、牛鍋、ヒラメのグリル、鶉のローストに氷菓子(アイスクリン)などの料理の作り方、材料などの説明なんかも入っています。まぁ刺身のつまみたいな物かもしれません。幽霊騒動。衆人環視の中での服毒死。屋敷の中にいた一人を残しての他の人物と家具の消失。「大隈重信公が館から消失した?」など次々と村井弦斎が行くところに事件が発生してきます。ミステリーと言っても、気楽に読み流す事ができる本だと思います。
牛鍋の発祥は横浜、幕末文久二年住吉町入江にあった居酒屋伊勢熊が始めたのがそもそもの始まり、その後たけ内、高橋という二軒が明治になって始めた。たけ内はステーキ風のものを、高橋はぶつ切りの牛肉を味噌仕立てで、太田町にあった高橋は軒先に縄のれんが下がっていたので、「太田なわのれん」と現在に至っている。とか。