書名:137億年の物語
宇宙が始まってから今日までの全歴史
著者:クリストファー・ロイド
訳者:野中 香方子
発行所:文藝春秋
発行年月日:2012/9/10
ページ:506頁
定価:2990円+税
ビッグバンから現在は137億年と言われている。それ以前のことはよく分かっていない。この宇宙が始まってから今日までの歴史を1人の著者が全編を書いている。最近では専門が分化しているため、これだけ壮大な物語を著す人は少ない。全歴史を俯瞰的に眺められる本です。
宇宙の始まりから今日までを24時間で表して、1秒前にようやく人類が登場する。その1秒間だけでも文明の発生、宗教の発生、戦争などなどいろいろな出来事あった。石器時代は今よりずっと良い時代。戦争もない。食べて行くにも楽な時代。狩猟民が遅れていたというのは間違い。彼らは自分で持てる物しか持たず、蓄積せず、土地にこだわらず、明日の食べるものは苦もなく手に入る。
世界の人口が500万人位の時代。そして彼らは結構頭が良かった。そんな良い時代が何故行き詰まってしまったのか?それは天候異変のせいで獲物が手に入らなくなってしまった。仕方なく米、麦などを作るようになった。これは本当は米とか麦のような手間暇掛かるものを作りたかった訳では無く、そうしないと生きていけなかったから。そして米、麦などを作ると蓄積出来ることで人口が増加し、持てる者と持てざる者が出てきた。そこから戦争、自分の土地に執着するようになってきた。
恐竜のいた時代(2億5000万年前)のCO2濃度や3000ppm、現在が380ppmと言われている。人間の活動で100ppm(産業革命以降)増えたとされているが、地球的に見ると3000ppmから280ppmを経験している。大騒ぎすることはないようにも思う。
人類の歴史の中で富を得るには7つの方法がある。「勝ち取る」「相続する」「稼ぐ」「盗む」「脅して巻き上げる」「育てる」「見つける」であるが、24時間時計で言うと0.001秒前まではこれらの7つの方法が時と場所を変えて行われてきた。大航海時代などは「脅して巻き上げる」「盗む」が横行した時代。その後でもやはりそんなことを繰り返してきた。未だにアメリカの行動を見ているとこの7つのうちよからぬことが行われている。
ユダヤ教はユダヤ人は選ばれた民、その民を天国に導くという教え。キリスト教はキリストという大工の息子は神の子として、キリスト教を信じる人は選ばれた民。そして唯一の神エホバとは別にキリストも神にしてしまった。仕方なく「三位一体」という方便を使っている。イスラム教は唯一の神はアッラーの神、モハメットは伝道者。これらの宗教は国家、政治、人々の暮らしに介入する。今、イスラム世界の反発は実はオスマン帝国などイスラム世界の方が昔は進んでいてヨーロッパなどは後進国だった歴史を見れば、納得する場面もある。この3つの宗教は世界は神が作った。人間も作られた。したがって選ばれた我々は世界の仕組み、自然の法則など神が設計したものであるから理解出来ると考える。本当かな?
大味な歴史ですが、全体を俯瞰的に見られる大著だと思う。137億年から歴史を見てみると人類の歴史など短いもの、地球の歴史から見ても0.1秒間でわいわいがやがややっているということが分かる。なかなか面白い本です。