書名:天使はブルースを歌う 横浜アウトサイド・ストーリー
著者:山崎 洋子
発行所:毎日新聞社
発行年月日:1999/9/15
ページ:270頁
定価:1700円+税
先日都筑区役所で山崎洋子さんの講演会があった。そのとき山崎さんが盛んに紹介したいた本です。漸く手に入ったので読んでみた。「誰にでも、言えなかったことがある 脛に傷持つ生い立ち記」よりのびのびと書いている。
横浜の戦後の歴史の1ページ、グループ・サウンズ全盛の頃活躍したゴールデン・カップス、白塗りの孤高の娼婦「港のメリー」メリーさん(五代路子が演じている横浜ローザのモデル)GIベビーと呼ばれた混血児たちを追ったノンフィクション。
ゴールデン・カップスは団塊の世代の混血児(ハーフ)ということで売り出されていたが、実際は混血児以外もいた。他のGSのグループと違って金に困らない裕福な人達、また昭和40年代の横浜本牧は沖縄、横須賀と並んでアメリカ。その本牧を中心に活動していたグループ。当時音楽でも流行、高級品でも東京より早くやって来たのは横浜本牧、勿論米軍の占領地のままだった。その周辺に米軍を相手の商売が流行っていた。そこで育ったロックグループのその後を追う内に、横浜の暗い、重い過去に気付く。
横浜には外国人墓地が4つある。一般的には山手の横浜外国人墓地しか知らない人が多いが、中国人のための中華義荘、英連邦戦没者墓地、そして最も知られていない根岸外国人墓地。根岸外国人墓地にはGIベビーと呼ばれた嬰児が800~900人埋められた言われている。確かな記録、証拠がない。著者はその慰霊碑の建設にともなって慰霊のための歌を元ゴールデン・カップスのメンバ-の1人、エディ藩に作詞を頼まれる。「丘の上のエンジェル」という歌を作った。「港のメリー」は謎の女、彼女の過去を断片的に追いながら、米軍高級将校相手の売春、赤線廃止からの人生などを追う。
この本を書くきっかけは著者の作品には「書くものにブルースが足りない」と言われたことに始まる。そして横浜のブルースを追いかけるためにゴールデン・カップスのメンバーに接触したことから、戦後の横浜の鬼っ子達に到達していく。そんな過程が描かれている。ただちょっと話が飛ぶのと、論理的な文章と言うよりは散文的に書かれているためにちょっと理解が及ばないところもある。でも著者自身で足を運んで、足で書いているそんな作品です。また知らなかった横浜の一面が見えてきたし、団塊世代の頼りなさ、戦後の価値観の違いに戸惑いながら昭和を生き、平成を生きる団塊の世代は、実は人まねばっかり、アメリカを見習えとばかり、自分で新しいことを切り開いてやろうという意気込みは学生運動が終わった。ベトナム戦争が終わった時になくして、環境に従順していたのではという著者の主張はうなずけるものがある。たまたま運が良かったので、親の世代より豊になれただけ。自分で何かをやったわけではない。そんな世代?そのつけが今に及んでいるのではないか。
GIベビー-GI(米兵)と日本人女性との間にできた子ども。
米兵をさすGI、これはGalvanized iron(トタン板)の略、Government issues(政府支給品、官給品)
横浜ホンキートンク・ブルース ザ・ゴールデンカップス
https://www.youtube.com/watch?v=yHP2tlWqok4Eddie Ban - Angels on the Hill - 丘の上のエンジェル
https://www.youtube.com/watch?v=ePdmyyDfO5s