投稿者 スレッド: 井沢式「日本史入門講座」3 天武系vs天智系/天皇家交代と日本教成立の巻  (参照数 337 回)

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書名:井沢式「日本史入門講座」3 天武系vs天智系/天皇家交代と日本教成立の巻
著者:井沢 元彦
発行所:徳間書店
発行年月日:2007/9/30
ページ:356頁
定価:1500円+税

キリスト教であっても仏教であっても基本的には牧師、僧侶は出家して独身、妻帯しないというのが常識だった。でもプロテスタントは妻帯は普通、浄土真宗も妻帯は普通。その他浄土宗他の宗派は江戸時代までは妻帯していない。明治になってなし崩し的に妻帯するようになった。浄土真宗は教義で妻帯も認められているが、その他の宗派は教義を変更したという事実も無い。教義とはその宗派の基本、それとの兼ね合いはどうなっているのでしょう。
キリスト教、イスラム教は唯一絶対の神を共にいだく、双方の神はお互いに排斥して、どちらも悪い神とののしる。その悪い神を信じているものは殺しても良いのだという理屈。これは未来永劫続く戦いにならざるを得ない。(これは根が深い。神とは???)

日本はそんなハッキリとした神、仏はいないが、無宗教というのはそれは違うだろう。神話の時代秋津島、瑞穂の国と呼ばれていた時代は大国主命が治めていた。それを天照大神が「国を譲れ」と脅してきた。息子の1人は自殺、もう1人は逆らって信濃の諏訪まで逃げてそこで幽閉される。諏訪神社に祭られている。そこで仕方なく大国主命は「国を譲った」事になっている。しかし多分殺されたのであろう。そして天照大神側は大国主命の怨霊を恐れて、伊勢神宮より大きな出雲大社に祭る。日本は元々競争社会というのは苦手な世界。「和を以て貴しとなす」でもやっぱり競争をせざるを得ないことがある。そこで恨み辛み抱いて滅んでいった人々を鎮魂する。それをすることで勝った人達も安心できるそんな思想が底流に流れているようだ。

奈良時代になって天武系の聖武天皇は天武系の子孫繁栄を願って世界で最高の技術を使った大仏を作る。(これは技術的には中国、朝鮮を超えていた)しかし、天武系は絶えてしまった。
天智系の桓武天皇は役に立たなくなった大仏、奈良の都を捨てて、平安京に移ってしまった。歴史学では南都仏教が邪魔だから平安京に移ったとされているが、最澄・空海などを遣唐使として留学させて新仏教を学ばせて、京都の鬼門延暦寺、羅城門の近くに教王護国寺(東寺)を作っている。

日本の歴史を考える上で政治史だけでは十分ではなく、宗教、そして文学も考えないと誤ってしまう。明治になって西洋の歴史学が入ってきて政治史、宗教史、文学史など細分化されたことによって奇妙な歴史理解がされてきた。平安時代などは歌が詠めないと出世出来なかった。逆に歌が詠めると出世出来た。政治と歌が一体化していた。このことを理解して始めて歴史が理解出来る。源氏物語は何故?藤原氏の政敵であった。源(光源氏)の出世物語になっているのか?それも藤原道長も紫式部を応援している。万葉集には天皇、公家などともに防人など庶民の歌が採用されているのか?これは世界的に見ても非常に奇妙なこと。今でも年始の歌会始は誰でも応募出来る。そして良い歌であれば誰の歌でも採用される。

歴史の見方をエッセー風に纏めた本です。既存の歴史学だけでは見えてこない歴史の視点を示唆しています。時間を忘れて一気に読めてしまう本です。