投稿者 スレッド: 井沢式「日本史入門講座」2 万世一系/日本建国の秘密の巻  (参照数 276 回)

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書名:井沢式「日本史入門講座」2 万世一系/日本建国の秘密の巻
著者:井沢 元彦
発行所:徳間書店
発行年月日:2007/1/31
ページ:291頁
定価:1500円+税

日本の歴史学会の批判などを踏まえながら、井沢流の歴史観を綴ったエッセー風の読み物です。昔使われていた単位のお話。坪は1坪は1日/1人が食べられるお米がとれる面積。360坪で1反=360日分のお米がとれる。(途中で300坪になった)この1反でとれる量が1石。10万石の大名は10万人の人が食べることが出来る。1石が1両(インフレで価値は下がったが)最近では1反で2~3石の収穫がある。江戸時代の終わりに全国3000万石と言われていた。人口も3000万人位だった。
一月の単位は陰暦で29.5日、朔日(真っ暗)が1日、三日月が3日、満月が15日、これでいくと1年は354日、1年365日との調整は2.3年に一回閏月を入れる。これを入れる大海人皇子月は二十四節気を参考に決める。

また年号の無かった時代(飛鳥時代の大化が最初)壬申の乱(大友皇子と大海人皇子が関ヶ原で戦った)のように干支・十二支を使っていた。
【十二支】「子・丑・寅・卯・辰・巳・午・未・申・酉・戌・亥」
【十干】「甲・乙・丙・丁・戊・己・庚・辛・壬・癸」
【干支(えと)】とはこれら「十二支」と「十干」を組み合わせたもの。60を周期とする数詞であり、暦を始めとして、時間、方位などに用いられる。60歳で還暦、元に戻る

など興味ある事項も雑談風に書いてある。この本で言いたいことは歴史は通常当たり前のことは書かれていない。通常と違うから事件、事柄として記録、記憶に残る。また政権が交代した時は必ず自らの正統性、正義を示すために、前政権の悪いことばかりを羅列している。世にある正史というのは時の政権が作った官史であることを忘れずに読まないといけない。史学会の実証主義(文献至上主義)、同時代の人、時の政権、古い文書などを信用する傾向が多いが、実はそこには実は嘘が混じっていることを感じ取る歴史的センスが要求される。現代でも新聞に書かれていることは事実かというと時の権力にごまをすった記事、感情に動かされて書いた記事などもある。古文書は資料とはなるが、絶対ではない。また当時当たり前のことは書かれていない。

そんな目で天智天皇、天武天皇について詳しく書かれている。天皇の名前は後から付けられた諡であり、天皇が崩御されて、其の次の世代が諡を付ける。天智の出典は実は殷(商)の紂王(「酒池肉林」が知られている)が周の武王に滅ばされたときに首に吊していた飾り天智玉から来ている。(森鴎外の諡号の研究『帝謚考』漢文で書かれているので理解が難しい。鴎外は最後の漢文に堪能な人と言われている)

因みに、天武天皇は周の武王から天武と名付けられている。天智というのは最近の感覚では良い名前だと思うが、紂王と武王を考えるととんでもない悪名、縁起の悪い名前ということになる。そして天武天皇は天智天皇の弟とされているが、紂王と武王のことを考えると天智は天武に殺された、そして息子の大友皇子も。これの言い訳のために日本書紀の1/4を使って天武の息子以下が作った。天皇の系図とともに神話の世界から桓武天皇までをエッセー風に纏めている。今までの歴史とは大きく違った視点が新鮮です。

古典篇(その九)森鴎外『帝謚考』から古代の天皇像を探る
http://www.iris.dti.ne.jp/~muken/koten09.htm