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柳橋物語 むかしも今も
« 投稿日:: 7月 03, 2014, 09:21:30 pm »
書名:柳橋物語 むかしも今も 
   山本周五郎長編小説全集 第五巻
著者:山本 周五郎
発行所:新潮社
発行年月日:2013/9/25
ページ:343頁
定価:1500円+税

江戸下町に暮らす名もなき人達を描いた傑作、柳橋物語、昔もいまもの2作が収録されている。一言で言えば「待っていてくれ」と一言残して旅立った恋人をひたすら一途に待つ、他の男に言い寄られても思い貫いて待ち続ける女、でも男が帰ってきたときには誤解で、結局結ばれることがなかった娘の話。指物師の親方の遺言を守り、その娘の幸せを見守り続けた愚直な男の話。話の筋としては簡単ですが、その物語の展開の仕方、出し方、そして簡単にハッピーエンドでは終わらない。

山本周五郎の神髄がよく分かる作品です。そこには人生の深み、重みが描かれている。そして次はどうなる、次々と読まされてしまう。そしてページが進んでくると終わってくれるなと思いながらついつい読んでしまう、山本周五郎のマジックにどっぷりと浸かってしまっている。これはいずれの作品にもそうしたところがある。語り部としての才能の違いか?現在の作家にはない新鮮さを発見してしまう。何回読んでもあきない普遍性をもっているように思う。